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究極のフェチ漫画「明日ちゃんのセーラー服」と西洋美術とエロス

前々から気になっていたが中々購入へと踏み込めなかった博先生の漫画「明日ちゃんのセーラー服」。

今月3巻が発売。褒めちぎります。

明日ちゃんのセーラー服 3 (ヤングジャンプコミックス)

明日ちゃんのセーラー服 3 (ヤングジャンプコミックス)

 

レジ出せねえよこんな表紙!

攻めすぎじゃないですか3巻。中身的には抑えめだったと思いますけど。

フェチ漫画としてその地位を確立しつつある本作。「エロ」との明確な境界をちょっと考えてみようかと。

画力は正義

https://web.hackadoll.com/n/CHSh「明日ちゃんのセーラ服」の画像検索結果

これは3巻からの抜粋ですが、水泳漫画でもないのに流動的な泳ぎの迫力がビンビンに伝わってくる。この一連のシーンは本当に価値のあるものです。

で、もちろん水着なのでウフフなシーンもあるにはあるわけで。というか水着だろうが制服だろうが部屋着だろうが、作者さんは肉のムニムニ感をことごとく表現してくるんです。

しかし実際に読んでいて「エッロいなあ・・・」とは感じない。いやエロいんだけど、それは北欧美人を見てまず美しさを感じてからその後にキレイな欲情をそそられるアレと似ているというか。初見では「」より「」が目から入ってきます。

エロ漫画っていうのはある程度デフォルメ化された方がエロいじゃないですか。圧倒的画力から繰り出されるエロシーンっていうのは欲の発散用には不向きで、そういう用途のエロ漫画には一般向けとは別のエロノウハウが必要なのだ、とぼくは思うんです。

そして本作。圧倒的な画力によって、欲情するよりまずその肉感の美しさにうっとりしてしまう。ジャンルは違うけども、「とんがり帽子のアトリエ」も同じような仕組みで、普段は気にならないような細部も読み込ませてくれるくらい、画力による惹き込ませ方がうまい。

そして上手すぎる絵には性欲をそそられない、に関して実は卑近な例がある。

画力とエロとルネサンス

Venus of Urbino - Wikipedia

「venus of urbino」の画像検索結果

これは16世紀の名画「ウルビーノのビーナス」です。素っ裸のビーナスさん、陰部なんか隠しちゃって破廉恥ですわね。

21世紀、この絵画に欲情する人いないんですよ。それはこれの持つ芸術的価値を知っているから、質感がリアルすぎるから、ただの一枚絵だから、など色々な理由があると思う、が、おそらく共通しているのはこれは普段男たちがお世話になっているエロコンテンツとは全く違うテイストの絵、つまり画力・リアルさにおいて比べることすら場違いの次元の絵だから、ということ。

しかしこの絵。世間にリリースされた当初、「なんだこのクソ下品な絵は!」ってお叱りを受けたらしいんです。まあ周りがルネッサ~ンスwと高らかに宗教画ばっか描いていたさなかこんな裸のお姉さんの絵が公開されたら困惑ですわな。

ルネサンス「明日ちゃんのセーラー服」

ルネサンスは「復興」という意味です。古代ギリシャマジ卍ってことで始まり、芸術に宗教的な気合が注入された。だから「ウルビーノのビーナス」のような素っ裸の女の絵は物議をかもしたってわけです。物議をかもす、ってのはつまり当時の人間はそういった写実的なヌード絵にを感じていたってことですね。

一方あらゆるエロをあらゆる方法で楽しめるようになってしまった21世紀。昔の名画に欲情することもなく、ただの芸術的価値しか見られなくなった。現代で「ミロのビーナス」が美術館から消えて青少年の規制対象になったりしないのも当たり前だけどそういうこと。

エロスが多様化し、リアルさが2次元エロで求められない21世紀というディストピアに現れた、「明日ちゃんのセーラー服」。写実的かつ忠実な表現で肉感をストレートに伝えてくる作風ですが、それは「ウルビーノのビーナス」が現代において官能的と思われない要素とまったく同じ。

描写の丁寧さがまさか時代に逆行するとは。ただのエロとの違いがわかってきました。

フェチとエロの境界

明日ちゃんのセーラー服」、フェチ作品ではあるけれども、身体の一連の動きを流動的に、かつ正確に描いていて、そしてあくまでも「漫画」というルールがあるゆえに、その流れの中の一点を捉え、一番美しく見えるスポットを抜き出しているんです。

一方同じ肉体の官能を描くはずのエロ漫画は、視覚から得られる性的刺激がマックスになる表現を一番大事にしている。それには漫画でしか表現し得ない誇大なデッサンや付加物も大切な要素。簡単に言うと多少大袈裟な方がエッチじゃん?って話。

 

「明日ちゃんのセーラー服」の登場人物は全員中学1年生です。本来その年代の少女の官能さなんて一握りの人間しか感じられないはずですが、まあ作者さんは見事にその肉体美を見せてくれる。

その点を鑑みると、「明日ちゃんのセーラー服」は躍動感・リアル感を出すための身体的誇張はしていると思う。実際登場人物の発育の良さはおかしいですからね。が、それはエロ漫画的な誇張ではなく、あくまでも「女性の肉体美を最大化するため」であって、その線引きがしっかりしているからこそ、女子中学生のパンチラ胸チラなどなどもセンセーショナルな扱いをされていない、というわけだ。

 

単純な画力の高さだけではなく、その力を女性の美しさを描写するために注いでいるこの作品。ルネサンス期の名画を見るような気持ちで、読んでみてください。

となりのヤングジャンプでは無料で読めます。気に入ったら単行本もぜひ。

[プロローグ] 明日(あけび)ちゃんのセーラー服 - 博(ひろ) | となりのヤングジャンプ

では。

 

1巻の爪切りシーンはエロかったで~す!!