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『カメラを止めるな!』を見たらとある要素が欠けていてざんねんだった話

見てきました~

「カメラを止めるな」の画像検索結果

 

ゴリゴリにネタバレ・考察・批判します。あまりポジティブな記事ではないので悪しからず。

天邪鬼ではなく、自分の率直な感想だといいな・・・。

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何が凄かったのか

ご存知の通り 大きく2つ

1. 単館上映の作品だったのに口コミだけでバズった

2. 超低予算のチープ感を逆手に取った物語

でしょう。

その点はたしかにすごい。本当にすごい。ただ、個人的には単なる普通に面白い映画でした。別に1800円払うほどじゃなかったな。解析!

 

話の構成が絶賛されている

のだけど、そんなにか、、、?

まず30分の1作品として終えてしまい、そのあと盛大なネタバラシという構成。これって最初のゾンビパートを見ている人たちを襲う、映像のとてつもない違和感とぎこちなさが映画の鍵じゃないですか。あちこちに伏線を散りばめて前半が終わるわけですけど、それをどう回収していくのかがキモ。前半パート終了時のエンドロールはたしかに先の展開が楽しみでドキドキした。

 

しかしその回収の仕方には正直拍子抜けしたな。

 

あれほど大振りしておいて、

あれほど伏線と違和感を残しておいて、

 

後半はただの答え合わせですよ?なんの捻りもなく、ただ単純に裏返しのカードを順番にめくっていくだけ。

しかも前半パートの違和感は、「単なる制作の都合」だったと明らかになるわけで。

欠けていると感じたのは物語性

これが伏線回収と言われてるのには思わず眉をひそめる。伏線回収っていうのは、一連の物語の流れの中で行われ、その回収がカタルシスを生まないと意味がないと個人的に思っている。

実際にしてやられたことは否めないけど、僕は「本当にゾンビが存在する世界」での物語かと思っていた。だからその世界でゾンビ映画を撮る人たちを題材にしてるのかと。てっきりファンタジーとドキュメンタリーが融合した、モキュメンタリー的意味での新しさが話題になっているのかと。その空想のゾンビワールドの中での伏線回収が、「映画を撮る」というリアリティと絡まってて、そこが優れているのだとばかり思ってた。結果全部読み違えたわけだが。

要するに、本編のメイキング映像を見せられたところで誰が湧くんだよ、と。あれ後半はストーリー仕立てにしてあるけどただのメイキング映像ですからね。低予算ゾンビ映画をこうやって撮りました、というのを寸劇仕立てにして後出ししているだけ。

たしかにコピー通り「この映画は2度始まる」っていうのは正しいんだけど・・・うーん。。。

「よく練られた1つの物語」を期待していたから、すこしがっかり。

 

しかも、「前半パートが退屈だった」という声がとても多い。僕はこれにもちょっと異議を唱えたいのだけど。

自分で言うのもすごく恥ずかしくて情けないんだけど、物語の隅から隅までチェックして、伏線とか謎とかを分析して考察したがる人、いるじゃないですか。

僕もその一人であり、むしろ前半パートが進んでいる最中は一瞬も気を抜かずにどんな些細なことも見逃すまいとしてた。だってどう考えても後ろのストーリーの伏線になっている箇所だらけだったし。

それを怠っていた人たちが前半の退屈さを嘆いているのを見ると、「いつもどういう映画の見方してんの、、?」と思ってしまった。僕なんかそんな数見てないのに。

 

それでいて後半盛り上がれるのはどういう仕組みなのだろう。作品よりも観客の問題だけど、後半パートがもっと違う作り、つまり前半の違和感を一貫性のある本線のまま活かせている作品だったらなあ、とおもう。それだとライト層は食いつかないかもしれない。本来のカメ止めのようにテレビのバラエティ番組みたいな構成じゃないから。

 

フォロワーさんの言葉をすこし借りると、「映画を普段見ない人が、いつもより複雑で入り組んだ映画を観た気になれる、物語の核心まで自分で到達した気になれる、カタルシスを丁寧に用意して"あげている"」という表現がしっくりくる。

 

まとめると、全くストーリー性のない構成の映画だったなと。まさか後半の親子愛や制作陣の熱意に心動かされた、なんて人もいるまいし。

最初の謎が2時間後に解決される、みたいな集中力を切らしたら置いていかれるタイプの映画ではなく、ほんと大掛かりなコントみたいな映画でしたね。面白い・つまらないとはまた別次元の、見当違い とか 的外れ というのが個人的な感想。

 

他の作品と比べてみると

一連の物語自体の構成が上手い作品を期待していた。ここでパッと例を出せればよかったのだけど思い浮かばない。何個か見てみる。

 

食人族

僕が期待していたのはこういう作りの映画です。モキュメンタリー。この映画は当時「本当に食人族が実在する」とまで思わせたらしいですよ。

 

パラノーマル・アクティビティ

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わかりやすいね。カメラ越しの映像から様々な謎と恐怖を体感する映画。

簡単に言うと、パラノーマル・アクティビティのホラーパートの後、制作陣の種明かしパートなんか見たくなくない?ってこと。興冷めするよ。

 

メメント

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この作品も最初に圧倒的な違和感を押し付けられる映画。時間軸を遡る、という点でも「カメラを止めるな!」と幾分か共通点はあるかな。もちろん最後の最後にちゃんと種明かしをしてくれるんだけど、ちゃんと1つの物語の中で完結するんですよね。だから「そういうことだったのか〜!」を感じる瞬間もしっかり織り込まれている。

対して「カメ止め」は前述した通り、種明かしをされた時点ではもう前半の「ゾンビ世界」は終了し、その世界線からは逸脱している。その状態で「ストーリー全体へのすっきり感・高揚感」を感じるはずもなく、ただクイズの答え合わせをしているかのような感覚になった。「メメント」を見たことある人には伝わるんじゃないかなあ。

 

進撃の巨人

 

漫画だけど結構いい比較ができると思う。この作品の画力はいわば「カメ止め」でいうところの予算であり、2つにはプロットでどう惹き込んでいくかでガチンコ勝負するという共通点がある。

そして「カメ止め」を「進撃」に置き換えてみると、

a.「壁」や「巨人」という物語の謎

b. その謎を残した状態でいったん話が終わる

この2つを見せられた後、「実はエレンやミカサたちの自主製作映画でした~」という間抜けな結末を叩きつけられるわけです。「進撃の巨人」は壁内という閉じた世界での謎を序盤からバンバン広げていき、舞台が広がっても物語の一貫性を保ちつつちゃんと回収していくのが本当に上手だった。

進撃の巨人」が絶賛されている理由はそこにあって、やはり伏線回収をひとつの魅力とするファンタジーでは物語の次元を飛び出てはいけないんだと思う。舞台と観客席に例えると、ずっと観客席から物語を楽しめるのがいいのだろう。

そして僕が「カメ止め」にがっかりしてしまった原因は明らかで、最初に閉じた世界で惹き込みすぎてしまったことだと思う。最初は観客席でカメラ越し=目撃者として映像を見せられグッと注視させるんだけど、後半では制作側から=当事者として物語の謎を知る。これじゃあ種明かしされても、物語そのものに対する強いカタルシスは起きない。

要はメタネタが極まりすぎたのがカメ止め。みたいな感じ。

 

さらにさらに、中には「ゾンビ映画」としてカメ止めを評価する人もいるようで。

どう考えてもそれはちゃうやろ〜、とか思うんですけど。面白かったのは200%認めますけど、ゾンビ映画としてこれを高評価にしたら他の良作が泣きますよ。

 

ショーンオブザデッド

たまたま同時期に見た映画。

仮に「コメディゾンビ映画」というカテゴリで考えると、カメ止めより断然面白い。

低予算だし、ストーリーも一貫性があってしっかりラストの最高なオチもある。『カメラを止めるな!』と比べても、ゾンビ映画としてのクオリティは段違いに上。

あくまで「ゾンビ映画」として『カメラを止めるな!』を語るならば、の話ですが。

 

好きな人は好き

 

よくできた映画だと思うし、ストーリーの予想を大胆に裏切られた感じは気持ちよかった。

なにより超低予算・無名キャストという点を最大に活かそうとした結果、へたくそな演技や雑な質感を逆手に取った演出になったのだけど、その点は本当に感服である。伏線回収とは認めたくないが……種明かしの連続は爽快だったし笑えた。

 

さんざん語り散らしたが、この映画の魅力は話の構成ではなく、そういった事情だと個人的には思った。だからこそ単館上映のときに見たかったなあ。大型劇場で観る「超大作」とはベクトルが真逆だから。

 

なんやかんやで見てよかったなと思える映画でしたよ。というか、多分楽しみのあまり深読みが過ぎたせいで穿った見方しかできなかったんだと思うと、ちょっと悔しい。

以上。