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『ミッドサマー』と『ヘレディタリー/継承』の語られなかったプロローグ

ネタバレあります。

 

ミッドサマー見てきました。

最高でしたね。

 

ひとこと言わせてもらうと 

カルト映画ではなく、言うなれば「カルト」を題材にした映画です。もっと言うと宗教とはまた少し違うと思ったが。

 

さてたくさんの人がこの映画を語り尽くしてて、さらに公式サイトにも鑑賞後の解説まで用意してくれている。基本的に私が語れることはない。

www.phantom-film.com

↑用語解説とかこのページで見れます。

ヘレディタリーもそうだったけど、鑑賞後の解説を公式が用意してくれるのはとても親切。

 

その中でもひとつ気になった点があって、あまり言及されている感じもしないので書き留めておきます。

プロローグ、気になる

『ヘレディタリー/継承』では、実はチャーリーもピーターも教団のための忌むべき子(実際は降魔の儀式のために崇められるのだが)だった。それ自体は事実として劇中で語られたのだが、全く関係のないあちこちに教団のシンボルが散りばめられていたり、ピーターの出生そのものが教団のためであることがわかったりする。

つまり目に見える範囲で語られることのないいわば前日譚というか、家族は映画としてのストーリーが始まるずっと以前から教団に侵されていた、というのが明らかになってより一層恐怖を掻き立てられるのだ。

hereditary-movie.jp

『ミッドサマー』でも同じだ。

ダニが自室で一晩中家族の死を嘆いていたとき。

部屋をなめるようにカメラが動いていき、ほんの少しだけ壁のタペストリーを映し出す。そこにはあの村の絵画と同じようなタッチの絵で、少女が巨大な熊に果物?を差し出しているものがあった。

 

その瞬間ぞっとした。まだ悲劇が始まってないのに。家族の死と『ヘレディタリー/継承』がリンクして、もしかしてダニがこの後の悲劇に巻き込まれるのは仕組まれていて、必然なのでは?という予想をした。

 

結果的にそれは正解だったようだ。

ペレがいつから彼女らと近づいたのかは不明だが、懐に忍び込み、ダニをメイクイーンに仕立てあげる準備を進めていたのだろう。おそらくダニ以外の家族が死んだのも、スウェーデン渡航を余儀なくするためのペレの仕業だと容易に想像できる。外部からの種を村が欲していることも合点がいく。そのためにダニ×クリスチャンのカップルと親密になり、2人の関係に亀裂を入れるような真似をして、ペレの思い描く方へ誘導したのだ。

 

・・・ということをすべて示唆するダニの部屋のタペストリーと、ペレという存在。

『ヘレディタリー/継承』でも同じようにピーターが定められていたように悪魔ペイモンに憑依されたわけだが、家族・宗教とは対象的に友人/恋人・コミュニティといった具合に一方の環境から追い出されたターゲットが逃げ込むように罠へ導かれていく様がわかる。

 

あと音楽

あと語られて欲しい点といえば、やはり音楽。黒板引っ掻くような音が心の底に響く感じ、まじで不快だった。

あんまり映画の音楽については明るくないので多くは語れないのだが。

 

チェルノブイリ』でも臨場感や緊張感を底上げするような補佐的音楽が印象的だった。邦画だととりあえずストリングスやピアノで和音ピャーwみたいな感じじゃないですか。『チェルノブイリ』も本作も「これ音楽って言えるのか、、?」みたいなただの不快な音の組み合わせが至高のBGMとして完成されていたと思う。

※ちなみにこの「チェルノブイリ」という作品は2019年最高傑作と言っても過言ではない。全5話のミニシリーズドラマ、ぜひ見てみましょう。

めちゃくちゃ面白かった

としか言いようがない。。

『ヘレディタリー/継承』よりも好きだな〜 カルト宗教よりも閉鎖的な民族コミュニティの方が馴染み深く感じるよね。

 

ストーリーはもちろん、音楽やカメラワークなどアリ・アスターの斬新性がとにかく話題になってる。『ミッドサマー』はホラー=びっくり!みたいな定石をひっくり返したような作品なので、そのカテゴライズすらしっくり来ない。

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