ハイボール・ハイライツ

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プロゲーマーはもうタレントでいいだろ

プロゲーマー舌禍事件(2020年4月)

 

半年ほど前、とあるプロゲーマーZ氏の発言が小さな世間を賑わせた。

僕もそんなに知ってるわけではないのだが、ざっくりと要約すると:

「〇〇(サッカーで言うところのリフティングのような、ゲームにおける基本動作)のコツってありますか?」というライブ配信中に誰かが残したコメントに対し、

Z氏は「んなもんねえよ。こっちは何万時間プレイングしてると思ってんだ。(意訳)」と回答したとのこと。

 

ツイッターで切り取られた一部のクリップしか知らないので枠外で真相が語られたのかもしれないが、

①プロとしてはあまりにも粗雑な回答では?という反発の声

②同じことを何度も訊かれて辟易するよね。という同調の声

の2つに分かれた。

 

個人的には①派。

その理由をねっとり説明するぞ。

eスポーツに(笑)が付かないためには、というお話。

あくまでもプレイヤーに対する所見のため、ファンとしてのべき論は除きます。ちなみプレイヤーを不快にさせるファンというのは「社会常識が欠如しているか、ただ単に子供か」の2種類だとおもいます。

鶏が先か卵が先か、ではないけれど、たしかにファンの質が改善されればプロゲーマーも余裕を持って対応できるのだろう、その点は本当に気の毒である。

ではなにが問題か

たしかに彼の回答内容だけを見れば間違っていないかもしれない。

自分がプロゲーマーだったとして、毎日ツイートする度に「上手くなるにはどうしたらいいですか?」とかいうリプライが来たらうんざりするかもしれない。

 

スポーツ選手だって、ムキムキの肉体や凄まじい体力を鍛えるコツ、つまりあらゆるムーブに繋がるような基礎練習のコツなんてないのだろう。日々鍛錬の賜物である。

だからといって初心者からの質問を無下にしていいのか、というのが問題ですよ。

物は言いようで、「何万時間もプレイしたらできるわ」というZ氏の回答は、夢見る子供たちを前にインタビューに答える野球選手いわく、「あきらめずにトライすればいつかできるようになる!」へと180度印象が変わる。

 

ゲームというコンテンツの性質上、コミュニケーションが対面でなされることは少ない。きっとZ氏も、例えばニコニコ超会議とかで生の質疑応答があればいつもより丁寧に答えていたはずだ。

どうしてそれが叶わず、本人も気を病んでしまうほどの騒動へ発展したのか。まずはプロゲーマーというその性質について。

プロゲーマー=タレント?

プロゲーマーという肩書きを手に入れるには、企業からのスポンサーを受けることが一般的な手段とされている。

会社員とは違くて、プレイヤーは企業の広告塔として活動していく。あくまでもビジネスなので、金貰ってゲームできてラッキー!とはいかず、その企業のために何か還元しないといけない。

となると、プレイヤーの素行はそのまま企業イメージに直結するはず。芸能界の浮気ひとつですべてのイメージキャラクター契約が破綻する昨今、その風潮は当然ゲームプレイヤーとスポンサー企業の関係にも当てはまる。

つまりスポーツ(=コンテンツそのもので勝負できる)ほど市場が盛り上がらず客層も開けている訳でもないので、現在のプロゲーマーは、ゲーム性ではなくそのプレイヤー性で魅せていくことにより界隈を発展させるような、ほとんどタレント然とした立ち回りが求められるはずなのだ。

要は、知らんゲームのトッププレイヤーが配信するより、誰もが知ってる本田翼が配信してくれる方が新規参入を狙えるのでは?ということ。

 

ゲームが上手い人なんていくらでもいる中、タレント化してゲーム以外のスキルが求められるプロゲーマー。見た目が良い・おもしろい・高学歴…など、ゲームが上手い以外の"イメージ"っていうのはとても大事。

それを個人で発揮できるに越したことはないけど、芸能界ではその道のプロ=マネージャー・プロデューサーという職種の人がいる。

プロゲーマーにはタレント性を磨かれ、プロデュースされる環境が足りないなあと思う。

スポンサー企業の役割は?

タレント性が求められるとは言ったものの、、現状のプロゲーマーはマネージャーやプロデューサー不在のタレントと同じようなもの。

芸能事務所は所属タレントの売り出し方を舵取りするだけではなく、平時よりそのタレントが然るべき方向性から逸れていないか確認修正することも仕事のひとつ。

一方で、プロゲーマーと所属チーム/スポンサー企業に関しては、プロデュースする能力・プロデュースされる能力という点において関係が未熟だ。そもそもeスポーツ界隈自体が未熟かつ狭隘で、プレイヤー自身も狭い世界から抜け出す機会が少ないため、いわゆるタレント活動することもあまりないのだが。

 

プロチームのプレイヤープロデュース能力が環境的にあまり育たず、そしてなにより必要とされる機会が少ないため、ゲーマーの素行不良が咎められないのだ。別に恋愛禁止!と掲げろというわけではなく、最低限のファンサービスぐらいは常時対応するよう、チームや企業はプレイヤーに求めるべきでは?

そして冒頭の、「顔の見えない相手から幾度となく届く同じ質問」にある程度の余裕を持って回答してあげる、というのはここでいう最低限のファンサに含めるべきだろう。

プロゲーマーにとって、配信中=仕事中のはずで、それは決してゲームをするだけじゃダメだ。

責任、、

たぶん食い違ってるんだろうなあ、とおもうのが一つ。

それは当のプロゲーマーらが、自分が広告塔として活動し、果てにはタレントとしてeスポーツを盛り上げていくべき存在だという自覚が無さそうということ。

僕自身はそういうイメージをプロゲーマーには持っていて、給料とは違うものの企業からお金を貰って活動していく上で、形はどうであれ社会的な責任が伴わないわけがない。

例えば配信中のプロゲーマーの責任とは、「○○社のプロゲーマーがコメントににめっちゃ悪態ついてた…」という印象を与えないこと。そしてそれに対してスポンサー企業はそういった反応をしないようプレイヤーに釘を刺す(もしくは教育する)権利があり、スポンサーを降りプロチームから離れることもできる。

そして両者を繋ぎ合わせ活動の基盤を提供するプロチームにおいては、プレイヤーの素行問題を管理・是正する義務がある。契約上どうなってるかは知らんが、普通その辺の話は盛り込まれているはずだし、その契約を交わす上での社会通念が欠落してるヤツはそもそもプロにならんでいい。プロゲーマーは社会人と同義だぞ。

 

現状、色々足りてないと思うな〜。スポンサーのスタンスは知らんけど、プレイヤー側の理由はその活動目的のズレにある。

「得意なゲームで1番になりたい!」

そしてその先にある

「そのためには生活全てをゲームに捧げたいから誰がお金と環境をくれ!」

この二つをほしいままにするだけではプロと名乗ることはできないはずだ。

少なくとも出資をしてくれる相手が企業であり、その企業も何らかの利益を得られる構造になっている、ということをプレイヤーはもっと意識するべきだろう。

・・・

そしてここでタイトル回収をするわけだけど、当のプロゲーマーたちの想いと実情は裏腹。ゲームは所詮ゲームで、「普段全くやらないけど面白そうなゲームを求めて来ました」と急にこのコンテンツへ新規参入するファンは少ないのだ。

一方、本田翼が何万人もの前でドラクエをプレイしたならば、ゲームに興味無かったとしても本田翼を通して参入する層がいるかもしれない。

人 じゃよ

これからeスポーツ界隈が拡張されるにあたって、コンテンツに求められるのは「誰がプレイしているか」、プレイヤーに求められるのは「どういうプレイヤーか」の二つなのだと思う。

そうなれば、既存のプロゲーマーたちのイメージ戦略の重要度はもうタレントのそれと同じだろう。

・・・

「観戦勢」「動画勢」なんて言葉をよく目にするが、それらを「プレイヤー」に昇華させてよりゲーム界隈を盛り上げられるかどうかは、プロゲーマーのイメージ戦略にかかっている。