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思い出野郎Aチーム「SOUL PICNIC」で新たな音楽体験をした

コロナがちょっと落ち着いて東京のライブ開催数もぼちぼち増えてきた。

僕も今年の10月から立て続けに3本くらい行ってて、久々にライブハウスで生音を楽しめる喜びを噛み締めている。

会場のみんなにおいてもちゃんと声抑えたりマスク外さなかったり、目指す場所は一緒なんだなあとしみじみしたりしなかったり。

 

そんなこんなで11月27日に思い出野郎Aチームのワンマンに行ってきました。

ずっと行きたかったバンドだったからすかさず予約したのだけど、ここ数年のライブ体験の中で一番打ちのめされたというか、本当に心に残るものだったので記録。

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鍵となるのは手話。

 

思い出野郎Aチーム SOUL PICNIC@USEN STUDIO COAST

こちら。

 

新木場コーストもこれで最後だなあ。

1回しか行ったことなかったけど、OYATが楽曲提供したリリスクのライブだったのは何かの縁かしら。

 

とりわけ何に感動したかっていうと、ステージ上に手話チームがいたこと。

聾者にも音楽体験をしてもらおうという突飛な発想から生まれたこの企画、ライブが終わってみれば凄まじい幸福感を会場にいた全員で共有できていたとおもう。

 

完全な聾か、すこし聞こえるのかは分からないけれども、普通に音楽を楽しんでいる人たちの傍で聾の人らが同じ空間で同じパフォーマンスを楽しんでいる。よくよく考えて下さい。やばくないですか。

 

それを可能にしたのが手話・・マコイチの歌、MC、その他メンバーの言葉も全部同時手話通訳していた。1人だと難しいので、チーム制で。

MCを通して、マコイチの持つ音楽に対する矜持や信念がドカンと伝わった。いわばユニバーサルでバリアフリーな音楽をしようぜ、というものなのだが、当然曲の歌詞にもそういう精神が色濃く出ているので、手話で歌詞を伝えるのは本当に革命的だ。

 

しかし言葉だけ伝えるのであれば不十分だ。あくまで音楽なのだから、リズムがあり演奏がある。その全て合わさって音楽だし、聾者に100%同じものを提供するのは難しい。

 

そこでも工夫が凝らされていて感動した。

まずコーラスの女性2人が、手話チームのすぐそばにいたこと。彼女らは唯一、曲調やリズムに合わせて体をゆらゆらさせたり、簡単な振り付けをしていた。手話を見ている人たちが曲のリズムを「見て」感じられるようにだろう。

というか、手話通訳チームもみんなノリノリだったのがすごくよかった。「目で見て楽しむリズム」っていう概念、簡単に思いつきそうなんだけど新しいな。

 

あとリズムと音について気づいたことがひとつ。

大音量のライブ音だと、ドラムとかベースのリズム隊の音が耳じゃなくて体の芯に響くんですよ。あれなら多分聾者にも感じられるはずで、会場にいる全員が同じリズムを同じ方法で感じていたんだなあ、と思うと感動します。

 

そして今回の手話ライブを語る上で欠かせないのがアンコールの「アホな友達」。

聾者が100%同じものを健常者と共有できるわけではない、と書いたけれど、それを限りなく100に近づけた試みがアンコールで披露された。

 

それはなんども繰り返される「アホな友達」というフレーズを、会場全員で手話にして盛り上がろう!というもの。「黙唱」って呼んでたけど、手話と振り付けを結びつける手法はあまりにもソウルフルで素敵だ。

「この瞬間、誰も彼も関係なくアホな友達という曲を共有しているんだな」「手を振り上げて手話で、体の奥底に響くリズムで、同じ言葉と感覚を共有しているんだな」と感じながらのアンコール、OYATの粋な計らいへの一体感に幸せな涙が止まらなかった。曲の途中でもみんな手をひらひらさせて拍手を手話で表現したり、本当に楽しい時間だったなあれは。

 

そんなこんなのライブ。本当に最高でした。今までのライブの中でも熱意と新たな試みとそれが生み出す圧倒的一体感が一番強かった。

 

音楽は他のカルチャーと違って「リアルタイムで音楽を共有する」という側面も持つ。五感で楽しむからこそ、人類全員が同じものを共有できるとは限らない。でも五感のうちお前らが使えるもの全部サポートして伝えていくぜ、だから感じる方法は違くても全員の最終到達点は一緒だぜ、という心意気、尊敬します。

・・・

自分、音楽ガチですこやな〜と自覚してからの方が人生長いが、これまで耳の聞こえない人と同じ空間で同じライブを楽しむ体験なんて想像したことなかった。全く新しい音楽体験をありがとうという気持ち。そしてもっと音楽が好きになった。

 

「同じ夜を鳴らす」で歌われている通りのことを実現させるOYAT、一生ついていきたい。

 

ライブ体験、最高じゃ・・