ハイボール・ハイライツ

ハイボールを飲みながら、気になるコンテンツのハイライトを。

2022年に出会った最高音楽たち

たしかにそうかも。

でもごめん、今年もやるわ。

今年はこんな感じでした

柴田聡子「ぼちぼち銀河」

今年のベストアルバムだと思います。

デビューアルバムから10年が経った記念すべき作品らしいけれど、本当に素晴らしかった。

 

弾き語りを出発点とする柴田聡子、今作ではバンドサウンドで彩られた曲が多い。舌足らずで不自然な文節や区切りの歌詞をじっくりと読み解くいつも通りの気持ち良さに加えて、聞こえてくるいくつもの快音に包まれた彼女の声もまた、いつにも増して心地よかった。

「サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト」が好きだなあ。日々ろうばいして、労働にも、日常の耐久戦にも、オールタイム悩む歌。でも最後にはホームアローン見て寝ちゃおう、というクリスマスという日の愛らしさ。「祈る神は土日祝はお休み」というフレーズが鮮やかに思い出される。僕らあくせく働く平日には、祈る暇がないですからね。休日にふと悩みに圧倒され狼狽、ついつい祈りたくなる。そんなせわしさと孤独が並走する日々が、もうすぐクリスマスに到達しますねえ。

あとは「24秒」も本当に素敵な曲ですね。アルバムのそれまでの曲は日常風景にピントがあっていたのだけど、この曲では急に抽象的で示唆に富むような詩になり、柴田聡子の頭の中の銀河を見せられているような気持ちになります。

時の流れの中では「楽しさ」が「悲しさ」を無神経に追い越してくるし、人が立ち止まることをそもそも意に介さないくらい、それは無機質的に進む。そんな無邪気な時の流れに足を掬われないでね私、という気持ちを「もうちょっと待って 24秒だけ数えて」で表現した。なんという傑作・・・

結局は感性のマッチング度なんですけどね。僕は大好きです。

Easycome「君が好き」「忘れない」

1年以上ぶりの新曲でしたでしょうか。混じり気のない純正なバンドの音に、汚れのないvo.ちーかまがのびのびと歌ってくれた。それを久々に(しかも2曲も!)聞けたのが嬉しくてたまらなかったのだ。

vo.ちーかまの何も誤魔化さない真心の歌声が髄の髄まで沁みてきます。アルバムやEPも期待していいかな。ライブもいきたいな。Easycomeをじっくりと聞いて心を落ち着かせたり軽やかに弾ませたりする時間、本当に好きだ〜〜〜

グソクムズ「グソクムズカン」

新進気鋭のフォークソングバンド「グソクムズ」の、旧作音源のリマスター+新曲のアルバム。本当に勢いに乗っていて、10月は青山月見ル君想フでワンマンを敢行したと思えば、すぐ来年2月には渋谷WWWでまたワンマン!すごいなあ。

歌詞もメロディも歌声もあっさりしているのに聞き応えがちゃんとあって、気がつくと何時間もループして聞いていることを忘れてしまうくらい、僕の生活そのものに完全に根ざしてしまった。2022年の下半期はこのアルバムを中心に日常が回っていたと言っても過言ではない。10月のワンマンは恋人と行きおかげさまで非常にエモ〜〜ショナルな1日を過ごせたりしたし、すぐその人と別れた直後にリリースされた新曲「夢にならないように」には的確に心中をまさぐられ、もう勘弁してくださいという気持ちです。来年のワンマンもたのしみだ。

YONLAPA「Is That True?」

続いては海外から。今年、YONLAPAというタイのバンドが大好きになりました。

音的には日本のインディーズシーンでもよく聞かれる類のバンドだし、歌詞も現地語はもちろん英語歌詞ですら資料がなくて読めないしで、100%彼女らの音楽を吸収できてはいないとおもう。なのだけど、そもそも世界中でタイのこの音楽が聞かれているということや、日本ではネバヤン・DYGLとツーマンできるくらいに人気を博している、という事実に、いち音楽ファンとして突き動かされるものがあったのだ。

東京からしてみれば辺境の地のタイで、日本と同じ流行の音が、異国の言葉とともに編まれている。それってとっても素敵じゃないですか。タイののんびりとした空気感に包まれた現地の若者たちの音楽性を想像できるのが楽しいです。あの日本のバンドと似ている!とか、このギターソロはYONLAPA特有で、オリジナリティが溢れていいなあ、とか。ジャミロクワイの曲名を拝借して、この音楽体験はさながら仮想旅行(Traveling without moving)ですね。

恐龍的皮「Neck and Neck」

次は台湾のバンド「恐龍的皮 / The Dinosaur's  Skin」から。

台湾の音楽についてはこんなブログを書いたりしました。

nola1617.hatenadiary.jp

恐龍的皮、たしか今年の台湾の音楽賞(日本でいうレコ大的な)を受賞してて、僕の台湾在住の友達も知っていた。ちゃっかりグッズとかCDとか買ってもらおうかなと話を聞いてみたのだけど、そもそもオンラインショップでは売り切れていた。

もう台湾だけではなく世界中で人気があると言えけれど、僕も彼ら(?)のユニークさとは裏腹の楽曲の深さ・歌詞が魅せる世界観の緻密さに惹かれた。なかなか新曲リリースは遅めなので今年は上記1曲のみとなったが、歌詞がまたキュートなのだ。

Can’t we just be friends
We can all camp under the moonlight
and just lay side by side 
when the shooting stars light up the sky
If you don’t mind
Then I don’t mind

ラストのサビです。彼らはもともと絶滅した恐竜で、現代に復活してバンド活動をしています。そんな彼らが博物館で襲撃を受ける歌・・そのラストの歌詞が↑です。古代の恐竜が「夜空の下みんなで仲良く流れ星を眺めようよ」とは、なんと愛おしく可愛らしい発想なのだろう・・・。

来年は日本ツアーもひっそりと期待しています。絶対に行きますよ。

WOOZE「The Magnificent Eleven」

続いては、イギリスから二人組のオルタナユニット。オルタナって結局何なんだろうね。いまだによくわかりません。WOOZEの曲はギターの音がとにかく気持ちよくって、ずっとキャベツをザクザク切り刻むあの快感に似ている。

ガチャガチャのギターに先導されてぐるぐる変動するリズムが好きです。WOOZEの曲には概念としてのパワーを感じますね。もしくは圧、密度、濃度、そういうのをWOOZEの曲から抽出して数値化してみたら、何かしらの値が絶対高い。そんな感じ。

ともかく、その力の限りに振り回されてみるという聴き方も、電気風呂のような刺激を受けられていいですね。めちゃくちゃアップテンポな曲調なのに、受け身でどっしり聞いていたいような、今までにないギターロックだなあと感じた。ジェットコースターやアトラクションと同じかもね。

たまに「うるせ〜〜〜!!!」って言いたくなる邦楽に出会ってしまった時、そういう"抜け感"とか"インターネット感"を重火器で殲滅してくれそうな勢いのWOOZEのギターサウンドめっちゃ好き。

AURORA「The Gods We Can Touch」

今年の音楽を語るうえで欠かせない、北欧シンガーのAURORAのこちらのアルバムを記録しておきたい。

AURORAとは:

オーロラ(AURORA)は、6歳のときに「一人で座って何かを創作したい」という衝動に駆られ、わずか12歳のときには「Runaway」という曲を書き上げた。「Runaway」は2015年に正式にシングルとしてリリースされたが、大自然を彷彿させる表現力と透き通った声で世界中にその独特な存在感が衝撃を与えた。何千マイルも離れた場所で、「Runaway」を聴いた当時12歳のビリー・アイリッシュにも「こういう音楽を作りたい」と感じさせるきっかけとなったほどに。

たまたま彼女に密着したドキュメンタリー作品をNHKで見たことがきっかけで細々と聞いていた。大自然の中で創作をする彼女の姿勢や才能に惹かれて好きになったんだけど、このアルバムもまた、今まで以上にAURORAの哲学を全方位から感じられる作品で、とても聞き応え・読み応えがあった。

この曲はAURORA自身のセクシャリティアイデンティティの行く末を他人に委ねることはないという表明らしい。そういった強いメッセージを、妖艶で不可思議な音楽と愛らしいダンスに乗せて表現しているっていうのが好きだな。この曲はかなりミステリアスな仕上がりだけど、このアルバムはいつも通り優しい音で溢れている。だけど歌詞を読み込んでみれば、彼女の意志やメッセージが散りばめられていて、とても聴きやすい上に読みやすいという現代の聖書のような詞曲だ。

動物的な生臭さを感じることなく、森の中でのびのびと歌い上げる彼女の姿を想像できる。深緑の森のようだったり、湖畔のようだったり、枯れ木のようだったり、彼女のバックボーンの大自然がそのまま情景として浮かぶ。そしてそれにAURORAの考えが言葉となり声となり曲となる・・なんというか、その芽吹きから枯れ果てるまでの曲の一生すべてが、まるっと良いですね。

LAUSBUB「M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB」

いやあ。LAUSBUBの新曲を待ってた。ずっと待ってた。。

このツイートに見覚えのある人もいるでしょう。

ちょうどこの時期クラフトワークを聞いたりしてて、あまりの洗練のされ方に度肝を抜かれたのをよく覚えている。そしてSoundcloudで公開されていた3曲を聴きこみ、「新曲まだかな〜」と当時高校生だった彼女らの受験(したのかしらんけど)を陰ながら応援していたんです。

そして今年!ついにこのEPが発表されました。本当に全身ビリビリ痺れた。。。旧曲の「The Catcher in the Die」の高校生ならではの感性を新しい音で楽しめたかと思えば、その次は落ち着いていながらも身体を揺らしてしまう都会的なメロディの「Sports Man」というキラーチューン。ああもう、最高だよ〜!って聴きながらニヤニヤしてしまいました。この新しい才能をずっと愛でていきたい。

ちなみに23年1月の東京のリリースイベントにも申し込んでしまいました。パソコン音楽クラブとxiexieが共演するんだもの。楽しみだ。眠れるかな。

Nagakumo「EXPO」

さあ次もスーパールーキーの曲を。Nagakumoという「ネオ・ネオアコ」を引っさげて活動するバンド。個人的にCymbalsカジヒデキフリッパーズ・ギターをよく聞いている一方で、シティ・ポップフォークソングの再興が流行るけどネオアコバンドは中々新しい芽を見ないな、と思っていたんです。

いやあ、まじでかっこいいですね。爽やかでアップテンポなネオアコの曲が、新進気鋭の10代(20代?)に奏でられているというのが相乗効果となって、自分もいつかの若さを引っ張り出してどこかに疾走したくなる気持ちになります。

今年の9月の「パンと音楽とアンティーク」という東京のイベントに出演していたので見に行ったんです。チャキチャキでわけ〜〜って思ったのだけど、ひとたび演奏が始まったらギュンギュンのギターと高速リズムの暴風雨に圧倒された。めちゃくちゃかっこよかった。渋谷系ネオアコといえばもうひと昔前のジャンルとなってしまったけれど、彼女らの自称ジャンルに「ネオ」がもう一つ付くように、その若さと確かな技術で「ネオ・ネオアコ」を切り拓いていってほしい。その轍、追いかけます。

そういえばvo.コモノサヤさんがEasycomeのvo.ちーかまの歌い様に影響されているという話を何かの記事で読んだな。関西の若手バンド界隈、あまりにも良すぎないか?

猫戦「蜜・月・紀・行」

最後はこちら。今年はこの猫戦というバンドに出会えて本当によかったなあと思います。歌謡曲のようにゆったり進む曲の中には確かなリズムや深いベースのうねりを感じることができて、ひとたび息を整えて聞いてみれば体にずいずいっと素敵成分が染み込んでいくような、そんな上品な音楽。

特にリズム隊が本当に好きです。「ヴァーチャル・ヴァカンス」を筆頭に、リズムが高速ではないからこそ際立つキメのグルーヴ感。声も楽器もリズムも、そのすべての音があまりにも官能的すぎる。

そして歌詞もまったく鼻につくようなことはなくて、生活の気怠さと楽しさがどちらも端的かつユニークに書かれている。リズムと歌もそれらの言葉が醸す空気感を拡張するかのように混じり合い、曲ごとの「そういう曲なんだね」という聞き手側のスタンスも明快で、なんだか聴きやすい。(自分で書いていてもちょっと意味わからないけど・・)

交わることないのうっとりして
くちづけるカーペット
スクロールして青い海をクロール
かりそめのマーベル

「ヴァーチャル・ヴァカンス」のここ、たまらなく好きです。歌詞も音も、すべてが好き。この数小節だけをずっと聞いていたい。

今年もまとめた

以上です。今年は記録しておきたい音楽が多くて、ついついたくさん書いてしまった・・

さてSpotifyではこちらの結果となりました。

右側はカラオケで歌いたくてヘビロテしてたらこうなった

Ginger Rootもめちゃくちゃ聞いたなあ。今年発表された楽曲はそこまで聞き込んでいなかったので、今回のブログには書きませんでした。年明けの来日公演、東京がダメだったので大阪に行くかもしれません。仕事大丈夫かな・・

 

それはそうと今年も非常に無益な一年だったなあ。こんな感じで毎年何千もの曲を聞いて自分の人生を仮想的に豊かにしていく。想像力だけは鍛えられているけれど、実生活では相変わらずしどろもどろでなんだかなあという気持ちが年々強くなっていきます。創作物が好きすぎるからリアルが疎かになるのか、リアルを生き抜くに相応しい人間性を備えていないから創作物に没頭してしまうのか・・人生ってむずかし〜

 

来年から異動に伴い仕事も落ち着くので、文字を書く習慣も取り戻していきたいな。最後に、上記のおすすめ曲をまとめたプレイリストを置いておきます。ありがとうございました。では。