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「フロントメモリー」鈴木瑛美子はゴスペルシンガーになれるのかしら

カラオケが上手いっていうので話題になって、ポテチのCMで本気で歌ってしまったゴスペルシンガー鈴木瑛美子。「恋は雨上がりのように」の主題歌「フロントメモリー」で鮮烈なデビューを飾ったわけだけども、そもそも原点のゴスペルとはなんぞやと。

フロントメモリー

フロントメモリー

 

 たまたま自分もゴスペルをよく聞くのでそれに絡めて。


鈴木瑛美子×亀田誠治「フロントメモリー」映画「恋雨」主題歌

プロデュースが本気すぎて怖い

「フロントメモリー」という曲。調べるまでわからなかったんだけど、神聖かまってちゃんの曲なんだね。亀田誠治の名前が目に入ったのでとりあえず聞いたみたけど、かっこよかった。

まずは鈴木瑛美子から。

ゴスペルという音楽は後述するけども、簡単に言うと生半可な歌声だとまともに歌えないくらいボーカルの力量が試される、そんなやつ。当然それを本業としているわけだから鈴木瑛美子の歌唱力はバケモンなわけです。ポテチのCMで度肝抜かれたよな。

あまりアンテナを張れていないジャンルだから見落としてはいるんだけど、近年のJpopってPerfumeとかきゃりーぱみゅぱみゅ菅田将暉みたいにとりあえずビジュアルや話題性で釣って、音楽的には有名クリエイターを迎えてそのボーカルの質をごまかす、みたいなのが多いじゃない。まあPerfumeを最近扱いしている時点で説得力ないけどね。

だがしかし、鈴木瑛美子ってメディアに適度抜かれてはいたけど知名度はまだまだというか、まさか小松菜々と大泉洋の映画の主題歌に抜擢されるとは思わなかった。つまり彼女の実力が知名度・話題性といった従来の評価基準を上回った、っちゅうことや。

そして鈴木瑛美子の歌唱力を全力でバックアップする態勢が整っている。

亀田 神聖 柴田 

+澤田

バンド好きのみならず邦楽界でも知名度の高いベーシスト亀田誠治。別に彼の作曲や音楽のクセは存じ上げないけれど、まあ「東京事変のベース」という肩書きの信頼感はすごいな。特に楽曲から事変ぽさ・亀田のベース感というものは感じられなかったが。当方、「東京事変がすき」という類の主張に対して「亀田かっけぇよな」としか返せないタイプ。にわか。

そんで元の曲が神聖かまってちゃんらしい。生々しい青春の裏に感じられる退廃的なネガティブさ、初見で見抜くことは当然できなかったけど神聖かまってちゃんの曲だと言われれば納得。こういう映画の主題歌、キャラメルフラペチーノみたいな曲が定石かと思ったが意外と攻めてきた。かまってちゃんってかなりアングラな印象があった。「友達を殺してまで」以降聞いてないもので、いまもしかしてWANIMA的な人気あったりして

そして柴田。彼は菅田将暉の楽曲を担当しているのでその流れを汲んだのだろうか。特に言うことない。

 

ともかく名前だけ見るとすごいよな~。

しかし、肝心な「ゴスペル感」が弱くて少し不安。

ゴスペルの敷居をさげてほしい

これがゴスペル。ゴスペルっていうのは歌詞を聖書から引用したりする、キリスト教の音楽。日本でいうところの能とか狂言にあたるのかなあ。わからん。

で、上のは正確に言うとコンテンポラリーゴスペルっていうやつで、宗教音楽としてよりも、エンタメ要素が強まった感じ。

一回聞けばわかるように、メインボーカル+バックコーラスっていう編成なんです。どちらも圧倒的な歌唱力で声の厚さで心に訴える音楽。基本「センキュージーザス!」っていう曲です。

鈴木瑛美子リードボーカル、つまり目立つ方のポジションとして歌っていたわけだけども、あまりにもこのジャンルの音楽が日本になじめない。基調がR&Bだし、そもそも教会で流れるような宗教音楽だし。敷居たけえって。

カークフランクリンなんかはアメリカでもかなり有名でBGMでよく流れたりするんだけど、鈴木瑛美子がここでのし上がってきてくれたので日本でもゴスペル布教されてほしい。

どっすか。教会音楽感ゼロ。近年のポップ寄りにアレンジされたゴスペルは歌詞こそクリスチャンだけど、音楽は非常に聞きやすい。しかも一曲を構成するバンド・ボーカルが量と質で他のジャンルを凌駕している。迫力という観点ではまさに随一のものだと思う。

これはぼくの好きなゴスペルシンガーTonex。トーネイって読むらしい。男性です。上のIsrael なんとかさんはとても爽やかな音楽が多いんだけど、この人の歌声はハイトーン、バンドも金管多めの編成と、なかなかに邦楽バンド受けするような曲が多いんじゃないかなー、と。

結構クセは強いけど、慣れてしまえばこちらのもんです。バックの演奏が軽快だから、分厚くて耳触りのしつこいボーカルも中和される。

超好きな曲。超よくない?Tom-H@ck玉屋2060%あたりが作曲したアイドルソングよろしく、ベースのスラップが効いていて、シンセと金管でポップみを演出している。かなり聞きやすいと思う。

荻野目洋子の「ダンシングヒーロー」のようなディスコ音楽が好きな人には本当におすすめなのだ。というのも、1960年から70年にかけてジャズから派生したファンク・R&Bらへんの海外の音楽を踏襲したのが80年代の日本のディスコ系だから。たぶんね。

 

ゴスペルの元はもちろん教会音楽で、「天使にラブソングを」を見た人はわかるが、いわばポップなゴスペルは邪流なのだ。だから探すのに一苦労すると思うが、上のIsraelなんとかさんはかなりモダンで都会的なゴスペルをやってるので、気になったら色々聞いてみたらどうでしょ。

鈴木瑛美子はこれからどうなるか

普通の歌うまシンガーとして名を馳せるか、それとも日本でゴスペルを広めた先駆者となるか。なかなかねっとりゆったり歌うような音楽は最近の日本では流行ってくれなくて、特に女性シンガーはやくしまるえつことかが神格化されてコムアイのような亜流もどんどん増えてきた。その中で真逆の喉ゴリラともいうべきゴスペルシンガーの小回りが効くはずもなく、今回の「フロントメモリー」のようにアウトロでしか真価のゴスペルみを発揮できないのだ。

むしろ今回あの曲調で鈴木瑛美子を抜擢し、アウトロで自由に歌わせてあげたのは英断だと思う。大人数を必要とするゴスペルだが、まずは混声からとかでいいから、ソウルフルな音楽を鈴木瑛美子には牽引してほしい。

スーパー歌舞伎と同じで、かたっ苦しい音楽をいかに聞かせるか、それを考えた挙句こんなクレイジーな曲が聞ける。本当にこのジャンルは飽きない。以上!