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ORESAMA新曲「ホトハシル」 とORESAMAが大好きなBOKU

ORESAMAというユニットがあります。

昨年再メジャーデビューを果たし、アニメのOPソングを舞台に引っ張りだこです。

 

 



個人的にはいま日本で一番と言っていいほど脂がのっているテクノユニットで、コッテコテのシンセポップ音楽を聞かせてくれる。大好き。

 

しかしひとつ  ここ1年ずーっとチクチク気になっていたこと。新曲「ホトハシル」で判明したのですこし。ほんのちょっとだけ爆語りします。いわばレビューです。

 

いまとむかし


ORESAMA/Hi-Fi TRAIN -MUSIC VIDEO-

ORESAMAの最近の音楽は高速BPMシンセサイザー+カッティングでエッジを立たせ、目立つストリングスでまとめることによって馴染みのあるJpop/アニソンに仕上げている。

でもルーツの音楽は実はかなり硬派で、Daft Pankやジャミロクワイに最新のテクノロジーを重ねたような、新しくも懐かしいディスコ系。

1stアルバム「ORESAMA」では音楽の派手さよりもグルーヴ感や打ち込み音の組み合わせが秀逸で、音数の多さをものともしないと統一感と中毒性があった。

 

ここまではよかったんですよ。

今気になっていることはごくごく小さいけど、いずれ古参の僕を彼女らから引き剥がしてしまいそうなくらい大きくなりそうなもの。チクチクの正体を、ぶちまけてみようかと。

 

同じ気持ちの人がいればいいなあ、

ORESAMAの映像と世界の変遷


ORESAMA / ホトハシル -MUSIC VIDEO- (TVアニメ『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』EDテーマ)

率直な感想をひとつ

がちゃがちゃしてる。

かっこいいけど、ムズムズする。

 解析!

 

まずMVを。

元々アニメ調のイラストをMVに使っていて、メジャーデビュー頃から実写も入れた感じ。今に至るまで毎回イラストレーターutomaru氏のイラストとコラボしている。


【MV】ORESAMA - ドラマチック

ルーツが懐かし目のディスコ音楽、と紹介したけれど、MVもそれに合わせているのがちゃんと分かる。彼女らのバイブスが明確であるのが伝わるし、僕はその徹底された世界観に惚れたんです。具体的に言うと、一昔前のアメリカンカルチャー。特に「バックトゥザフューチャー」を想像してもらえればわかる、あの芋臭さが混じったハイファッション。


ORESAMA / 銀河 【MV】 公式

これは世界観的に現実離れしてはいるんだけど、結構80sのサブカルチャーと通じるものがあると個人的には思っていて、チープなSFっていう世界を存分に楽しめる。ファッションを見てみると、 小島くんが着用するジャケットなんかに(イラストレーターの)バイブスが濃く出てる。

 

 

次はメジャーデビュー後。


ORESAMA / ワンダードライブ -MUSIC VIDEO- (TVアニメ『アリスと蔵六』OPテーマ)

デビューと同時にutomaruワールドが失われてしまうとばかり思ってたから本当にうれしかったなあ。

実写であることに抵抗感は全くないのだけど、やはり世界観っていう部分から観ると180度違う。完全にファンタジーになってて、「ドラマチック」や「オオカミハート」の人物に見られた古きカレッジファッションは無し。

これも別に全く構わないのだけど、ぽんちゃんがアイドル的存在になっていたり。それも扱い方がボーカロイドアイマスみたいなんだよね。要は曲の世界が「リアリティのあるサブカルから「空想上のダンスフロア」みたいな、二次元的な存在へと変化した。

ビジュアル的な世界観が変わってしまったという問題。「Hi-Fi Train」を見てもらえればわかるように、渋谷のポップカルチャーを表現していた彼女たち、以前はそこに重点をかなり置いていた。なので当然リアリティっていうのも重要視されていて、それはMV以外にも1stアルバムの曲の言葉を見れば一発でわかる。

元々ORESAMAの世界がずば抜けて情緒的ではなかったので別にそれ自体に好きも嫌いもないんだけど、変化自体にもやもやするのだ。"テーマソング映え"するように変化したMV…リアリティが無くなって、ボカロのようなインターネット音楽を目指しているように感じてしまう。オシャレをしてウキウキで渋谷を歩くときに聞きたいのは「ドラマチック」だよ。僕が女の子なら。

で、やっぱり原因は1つしかなくて、それはアニソンシンガーとして2人が始動したこと。だから歌詞もアニソン向けにかなり抽象的になったし、音楽も以前よりJpopテイストになっている。アニソンに関わらず、テーマソングという条件を無視して本人達のルーツに従って曲作りするのは難しいそうで、やはり商材として音楽を扱う世界で好き放題、とはいかないのだろう。抗えない部分は絶対あると思う。→しかしこれに関しては「音楽的にはあまり憂う必要はない」という形で後述する。

だからとりあえずビジュアルで惹かれた僕としては、もう一度あのポップカルチャーの中に飛び込んだような曲がいいなあ、と思ったり。依然としてORESAMAのMVは2次元・3次元の折衷が凄まじくて、特に僕みたいな、MVからプロモから何から何までを含めたネット音楽が苦手な人にとっては非常に取っつきやすいんだけどね。

◎憂う必要はない というのは、

で音楽性のはなし。

かつてDECO*27がボカロ界を席巻した時期…弱虫モンブランとか二息歩行などが流行った頃は、バンドサウンドがメインのボカロが主流で、DECO*27は軽快なギターをメインにしていたから聞きやすかった。それが近年になって変わったのは明らかで。

要は、明確なビジョンの元に曲作りをしているORESAMAが、この先制限された場で存分に自分らの世界を表現できるのかなあ、っていう不安を「ホトハシル」を聞くまで抱いていた。

 


ORESAMA / ホトハシル -MUSIC VIDEO- (TVアニメ『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』EDテーマ)

じゃあこの新曲を聞いてどう感じたか。

表面上はアニメ映えするようなテイストに仕上がってはいるけど、拘られた細部はちゃんとORESAMAだった、ということ。

具体的には

・ずっと踏襲されているギターのカッティング

・サビラスト、ベースとシンセのグルーヴ感

・キメの嵐

でしょうかね。

というか"16ビット"がテーマなだけあって、普段のORESAMAより刻み方とかが細かくて曲全体がとてもシャープなんだよね。だからこそ、イントロから急発進した曲が、最後16ビートが掃けて収束する瞬間にウットリするの。この曲の大部分はサビラストの「つかまえにゆこう」とアウトロの大振りなキメ…というカタルシスの前座みたいなもんよ。

流星ダンスフロアでもそうだったけど、細かいところはちゃんとディスコ感を大事にしていて、ストリングスが最上層で目立ってても下で支えるベースラインやシンセは変わっていない。(少しスラップが多くなったのが気になるが。)特に演奏のキメは健在で、あまりに露骨だとリズムを刻みすぎてしつこいけど、上手くアクセントとして取り入れている。

たとえば「銀河」、あれは傑作すぎるのだけど、2回目のサビ後のキメ連打、あそこよく聴くと4ビートで、よく考えてあんなあ、とか思いつつ耳から射精してしまうわけです。

さすがに初期のグルーヴ感は控えめだけど、この曲に限らず端々で感嘆の一節は今でも大体ある。「ハロー・イヴ」の例の箇所はため息が漏れる。バラード曲で聴き手を揺らすのか、という。まあつまるところ 「ホトハシル」はメロディ的には今まで通りで、少し派手になりすぎ感は否めないけど「ORESAMAであること」がわかる。

ちなみに拭いきれない「詰めこみ感」はたぶん今回この「ホトハシル」が"そういう曲"だという、いわばコンセプト、だと個人的には思っている。何も気にせず聞くと少々安っぽく聞こえてしまうけど、今後も続くとは考えにくいかな。

◎好きすぎるゆえ考えすぎてしまう

となると気になるのはやはり曲の世界や映像。映像もユニークな武器として扱うからこそ、アニメ感を捨てるわけにはいかないんだよねえ。まじ難儀。まあ電子系っていう音楽とアニメーションのシナジーはすごくいいのだけど、多くの人を魅了し、人気の原点となったポップカルチャー感」が近い将来に失われてしまいそうで。僕が本気で思いを馳せる時代から着想を得た音楽、その有り難みは言い表せない。「ドラマチック」のMVに突き動かされて、現にポップカルチャーに携わることを職業としている。

 

僕と同じように唯一無二で完成された世界の虜になった人はいると思う。絶対に失われてほしくない。ほんの少しずつ大好きなバイブスが薄れていくORESAMAを聞いて、そう思った。以上…。