モブ子の恋、女性向け漫画トップですって。
すごい。
かたやオッサン(?)の僕でもたいへん楽しめている作品で、恋愛漫画なんて読まないのにこれにはドツボにハマっているよ。解析だ!
あらすじ
地味でピュアな男女の、低速の初恋
以上。
ここからは個人的にすごくいい点を。個人ブログなので。ネタバレしまくりますよ。
入江くん vs 金子さん
3巻で胸を打たれました。
よくいる陽キャラって、他人の恋愛をダシに勝手に盛り上がるの大好きですよね。僕は大っ嫌いなんですそういうの。ほら、地味な友人が恋愛に踏み込んだ、みたいな噂話って格好の餌食じゃないですか。悪気とかなくて、ただ単におもしろいだけ。
その点に入江くんが荒ぶってしまった気持ちが痛いほど伝わってきた。恋愛に不慣れで、そもそも自己肯定感が圧倒的に低い人間側からすると、ひとつ恋愛をこなすだけでも心身共に相当疲れるんです。まさに恋の駆け引きを楽しむ余裕などなく、たられば を盾に臆病にならないと心がぶっ壊れる。入江くんの恋に対する繊細さは金子さんには恐らく通じていなくて、彼らの恋愛観には溝がある。
ダメな人は恋愛的自信のなさを理論武装して正当化し、進展が一切ない恋をする。まさに相手の優しさに甘えて、自分の好意と相手がどう思っているか、っていうのを向き合わせることができない。
そこで田中さん入江くんの「付き合うっていうか、なんか一番幸せな距離だからここを保てていれば…」みたいな、外傷は負わないかわりに自分で自分を傷つけるアイアンメイデンの中に入り込むわけです。
僕は入江くんがいつまでも隣にいて、ずっと二の足を踏み続けてくれないかな、って期待していました。同族だとばかり思っていたよ。
わっかるな〜わっかるよ〜ってヘラヘラして読んでいた僕。
入江くんが一歩進んでしまう
しかし入江くんが気づいてしまうんです。向き合うべきは自分の不安、じゃなくない?と。
自己肯定の低さで恋愛が失敗してしまう人間、絶対にその理由って
「無理だと思ったから自ら退いた」
「結果はわかってたからあやふやな伝え方をした」
とかとかで、とにかく保身に全力なのだ。傷付くのが明白だものね。わかるよ。
入江くんのみならず田中さんもそういうスタンスだったのだけど、男性読者の僕的には入江くんのその部分に共感しすぎてて、勝手に同盟を組んでいた。
でも、デートの最後に入江くんが勇気を出した。
勢いでなんとかなりそうな初恋なのに既に自信が持てていない入江くん、田中さんの一挙手一投足にドキドキして、それに返す自分の反応にいちいち辟易してしまう。そんな草食を通り越して絶食状態だった入江くんが!!
安全地帯から勝手に共感し、フフ入江くん仲間〜wとのんびり読んでいた僕は最後の展開に目がまん丸ですよ。
置いていかないでくれ
置いていかないで…。
表題で 酷 だと書きました。
その通り、この漫画は低いレベルの恋に共感し、もっと言うと同族意識を持ち安心している読者に「オラお前甘えんな!」と喝を入れる物語。3巻でようやく気付けました。
ウブな入江くんが着々と成長している。ひどいよ!僕ら仲間だろう!告白しちゃうのか!?
いち読者として、僕もそろそろ入江くんたちの恋を教訓としないといけない。この話は2人の低スピード感を棚に上げて自分の恋を許す用のものではない。
とにかくゆっくりだけど前進がテーマなのだ。田中さん入江くんが基本的にネガティヴだからこそ、とやかく理由を付けて恋に躊躇う読者からこの漫画は支持を得ているのだろう。
さらに女性人気が多いとすると、田中さんの受け身スタンスへの小さな胸キュンの連続が支持理由なのかもしれない。連絡先を交換してくれた、遊びに誘ってくれた、などなど。
でもすこし深く見てみると、やはり四苦八苦しながらも、痛みを覚悟しながらも、前進しないといけないとわかっている入江くんの姿勢っていうのも男性側から見れば大事なテーマのひとつ。
「女性向け」=田中さん目線 ということなのかはわからないけど、今のところ男性目線の入江くんに対する共感・教訓を男性にオススメしたい。
主題が「モブ子」なのでアレだが、これは「モブ男」の話でもある。
いい漫画です
酷 と書いた理由は伝わったかしら。
というかあたかも恋愛弱者代表のような視点で語ってしまったけど、中々卑屈な読み方をしていたな。
「モブ子の恋」はとてもあっさりしていて読みやすい恋愛ストーリー。
でもその裏にある、登場人物のネガティブとポジティブの行き来を気にしてみると、もう一歩踏み込んだ「共感」にたどり着ける。そしてその先の2人への応援は、自分にも教訓として返ってくる。いい漫画です。以上!