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忘れたくない、終わってしまった音楽 - Vol.1「ふくろうず」

令和時代、あまりにカルチャーの消費サイクルが早くて疲れませんか?

僕は疲れました。

 

ちゃんと作られた音楽は丁寧に聞きたいのだけど、

解散や活動終了してしまった音楽に関しては、じわじわと埋もれるのを待つだけしかできない。大滝詠一じゃあるまいし、ほとんどが再興できずデジタル大海に沈んでいくのだ。

そんなこんなで、自分のライブラリからたまたま流れてきた少し前の素敵な音楽を記録してみようと思い立ったのだった。

 

Vol.1- 「ふくろうず」

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ふくろうずのみなさん

2007年に東京で結成。都内を中心に活動、MySpace上で公開された楽曲が口コミで話題になり、東京のライヴハウスシーンで次第に注目を集めていく[9][10]

2009年12月、初音源となるミニアルバム『ループする』をライブ会場とdisk union限定で発売。このミニアルバムはノンプロモーションにもかかわらずdisk unionのインディーズチャート首位を独占し続け、これをきっかけに人気は全国区に拡大[9]

2010年3月の初ワンマンライブを関係者が観覧したことでSMAとのマネジメント契約が進む[10]。4月7日、デビューアルバム『ループする』を新曲2曲を加えた全国流通盤として再リリース[9]。10月に2ndアルバム『ごめんね』をリリース。

2011年6月、3rdアルバム『砂漠の流刑地』でEPICレコードからメジャーデビュー。

2013年7月に約2年ぶりとなるミニアルバム『テレフォン No.1』を発表する。

2014年6月にアルバム『マジックモーメント』をリリース。

2016年、徳間ジャパンコミュニケーションズへ移籍。7月13日に約2年ぶりとなるフルアルバム『だって、あたしたちエバーグリーン』を発表する[11]

2017年、12月24日をもって解散を発表。

知ってる人も当然多いだろうけど、10年の活動ののち、2017年に解散したバンド。

途中までSMA所属のアーティストで、メンバーの年齢も近いBase Ball Bearやねごとの最盛期とも重なり、手堅い人気があった。

解散は突然のことだったのでひどく驚いたが、今もボーカルの内田万里がソロで活動していたり、完全に終了したというわけではなく、その才能は未だ続いている。

内田万里の美しい感性と、初期から終盤にかけて見せてくれた音楽的変遷を紹介しつつ、最後に個人的に好きな曲をプレイリストにまとめてみた。

初期 - さわやかセンチメンタル

ナンバガに思春期を侵食された若者同士が組んだ青春バンドが隆盛していた2010年代。

いや実際そうだったかは知らないが、ふくろうずもその例に漏れず、厚めで無骨なバンドサウンドに、キーボード&内田万里の色を乗せることで個性を発揮していた。

この時期の大きな個性として、「男女混成ボーカル」がある。

open.spotify.com2010年「ループする」より

ベボベの「十七歳」を追いかけるかのように、男女が青春を切り開いていく歌。

メインとなる内田万里の舌足らずな歌声をバックアップするかのような、男性ボーカルとしっかりしたバンドサウンドが特徴的だ。

そうして完成したメロディに一体どのような言葉が乗っているのだろう・・と歌詞を見て、そのストレートさは皆を驚かせた。

open.spotify.com2010年「ごめんね」より

 「ループする」の後に発表された「ごめんね」で飛び跳ねるようにヒットしたイメージ。上記の「ボーイミーツガール」のように、同じフレーズを何度も繰り返すことで訴えかける言葉が多い。これは終盤まで変わらずなので、注目していてほしい。

 

メロディはバンドサウンドにキーボードが付いてかなりさわやかで、内田万里の甘い歌声ともバランスが取れすごく聞きやすい。その明るいメロディとは裏腹に歌詞はどうにもひねくれていて、傷物を優しく撫でまわすように感傷的。

中期 - ポップとユニーク

「中期」がいつからなのか・・は適当だけど、個人的に「テレフォンNo.1」あたりから、ふくろうずがポップでユニークな楽曲を多く発表するようになったな、と回顧しておもう。

 2013年「テレフォン No.1」より

アルバム全曲の印象ではないが、リード曲「テレフォンNo.1」という曲の飛び抜けたアップテンポ感がそう思わせているのだろう。 

アルバムの印象としても天真爛漫でガーリーな曲が多い。テンポや曲調は色とりどりだが、歌詞を見れば一目で内田万里の思い描く青春像がこのバンドを牽引していると分かる。

open.spotify.com2014年 「マジックモーメント」より

この曲をはじめとした打ち込みのリズムが見られるやや前衛的な曲と、これまでのしっとりしたバラードが混在していた名盤「マジックモーメント」も、中期に分類していいだろう。

2015年「ベイビーインブルー」より

徳間へ移籍する前の最後のミニアルバム。SMAっぽいっていうか、ポップに振り切れている。この「ハートビート」も、ふくろうずが拙いヒップホップを披露しているのが滑稽で、ユニークで、愛らしい。

初期のまっすぐな青春から全盛期のこうした余裕へ変遷し、ポップスのメロディとしたたかな女子の感性とが合わさった結果、ポップバンドとしての大成を果たしたのだろう。

後期 - しっとり、じっくり、そして解散

2016年に徳間へ移籍し、その後2枚アルバムを出してふくろうずは解散する。

その2枚のアルバムはこれまでと比べて明らかにバラード曲が多いのだけど、その中から1曲ずつ、リード曲をピックアップしてみる。

2016年「だって、あたしたちエバーグリーン」より

これまでのラブソングだと、たとえセンチメンタルだとしても、芯があってどこか自信に満ちた、強気な歌詞が多かった。

この曲「うららのLa」はどうか。

しっとりしたメロディから聞こえてくるのは、ガーリーな時代から打って変わって、深海の中から光る海面を仰ぐかのような、作り手の深度が増しているのだなと感じさせるシリアスな歌詞。

 

それはそうと、この曲は本当に歌詞が美しい。。

サビ前に「気になった」「君となら」と韻が揃った2つのフレーズを繰り返しつつ、リズムも揃えながらトントントン、とサビへジャンプする。

そしてサビは、「まだ胸は」「痛むけれど」「つないだ手」「信じたい」と、5音のそれぞれのフレーズで流動的に歌い、最後「なぜ」のたった2音の言葉でトン、と着地するのだ。

この曲の、5・7・5ベースでリズミカルに歌ったサビの一連と言葉の組み合わせが、あまりにも綺麗で愛おしい。

意匠を凝らした土台の上にまぶした、金箔のような内田万里の言葉、それを披露したこのアルバムはそれまでの集大成のようにも感じる。表面的なメロディはもはやアップテンポである必要もなく、その心情としては「内田万里ものがたり」の主人公たる少年少女の成長だって影響しているだろう。

2017年「びゅーてぃふる」より

本当に美しい曲。。。

どこまでも素直な歌詞と、遊び心あふれる「びゅーてぃふる」というひらがな表記が繰り返される。「解散しちゃうけど、ずっと好きでいてね」というメッセージを感じざるを得ない、そんな曲だ。

解散間近に発表されたこのアルバムには、「」のように、重苦しくも決意を見られる曲が多い。一方この曲は、曲調こそしっとりしている印象だが、主人公「僕」は浮気性で自分に自信が無いけど、それでもずっと愛してくれよ、というものだ。すぐの解散を経てどんな姿になろうとも、ふくろうずの遺した音楽は美しい。その気持ちを大事にしてくれよな!と、ふくろうずの変遷を十把一絡げにしてクスっと笑えるようなユニークと共にしっとりと歌い上げたのだ。

アルバム単位で見ると、別れを惜しむ曲・新世界へ飛び込む曲・過去を振り返る曲、「ふくろうずの解散」がいろいろな形で曲に落とし込まれているが、やはり「びゅーてぃふる」が一番しっくり来るというか、10年の軌跡を辿ると腑に落ちるな。そんな名曲。

 

・・・

そうして解散したふくろうずのその後も少し紹介しよう。

uchida-mari.com

ボーカルの内田万里はソロで活動している。

open.spotify.com

ベボベの関根サンがサポートでバンドセットに入ったりしているらしい。

ライブ行きたいなあ。

さいごに

上で紹介した曲も織り交ぜつつ、個人的なベストを集めたプレイリストを作りました。

open.spotify.com

どうぞ聞いてみてください。

ちなみに「ベイビーインブルー」はレーベルの関係か配信されていないので、音源欲しい人は買おうね。デザインも可愛くておすすめです。

 

これを書き上げて思ったけど、色々な人に聞いてほしいな。

大好きで埋もれてほしくない音楽はまだたくさんあるので、Vol.2以降もちゃんとやってみようとおもってます。

では。