ハイボール・ハイライツ

ハイボールを飲みながら、気になるコンテンツのハイライトを。

音楽と週報 vol.40 2023/12/23〜12/29

1 松任谷由実 49 scrobbles
2 毛皮のマリーズ 15
3 Miyuki Nakajima 13
4 tomoo 9
5 キリンジ 7
6 ザ・おめでたズ 5
7 フーバーオーバー 5
8 みらん 5
9 Polta 4
10 easycome 3

ひたすらユーミンを聞いていた週。

12/23(土)

午前の回で「ファースト・カウ」を鑑賞。ズーズーいびきをかいていた人が近くにいて鬱陶しかったが、たしかに眠ってしまう空気感なのも否めない。ケリー・ライカートの余白がいつもより多めに感じられて、本作ではそれが良くない方向に働いた気がする。どんな作品にも自分で解釈を見いだせる人向けの、かなりハイコンテクストな作風だった。

お昼は渋谷から有楽町へ移動し、ドーナツを食べながら放浪記を読み進めた。

続けて「ショーイング・アップ」を鑑賞。こちらはライカート監督の最新作で、かなり現代的だったのが印象的だ。余白の多さは相変わらずだけれど、中心に映っているミシェル・ウィリアムズの淡い色がじわっと滲んでいるような、行間の彩りもすこしいつもより鮮やかだった気がする。これはかなり好みの作品だった。

劇場で職場の先輩とばったり遭遇した。終映後にすこしだけ立ち話をした。見えていないだけでこれまで何人もの知り合いが劇場にいたんだろうな。見られていることを多少は意識した方がいいのかもしれない。

帰宅して自炊し、ずっと楽しみにしていた「Saltburn」を配信で鑑賞。バリー・コーガン様の深淵に飲み込まれました。「プロミシング・ヤング・ウーマン」のような説教臭さがなく、エンタメに特化したライトな物語と画作りに、バリー・コーガンが重厚な見応えを演出していた。

翌日会う予定だった元同僚に「トットちゃん」を見に行こうと誘われたが、その作品自体にあまり興味がなかったり、クリスマスイブにシネコンでそんな話題作を見る気も起きず、即答で断ってしまった。しかも明らかに興味がない返事をしてしまったので、後から謝った。その興味のなさも感じ取ったよ、と言われたじたじ。

12/24(日)

大掃除をした。床も拭いた。もう汚くて悲しくなるけど、また掃除すれば綺麗になる。でもキッチンの換気扇はこの部屋に住んでから数えるくらいしか掃除したことがない。汚くてもそのよごれが見えないし、そもそも汚いことで何か不都合があるのかもよくわからず、ずっと放置している。綺麗好きなのかガサツなのかよくわからない。

目に見える範囲で掃除を仕切ったので終わりにし、3月公開の新作映画を試写。これはかなり面白い。有名監督の意欲作ということもあり、期待している。

夜は前の部署の同僚二人と飲みに行った。自分が合流するとそこには前の部署でお世話になったディレクターがいた。基本的にそのポジションにいた人たちのことを好きになれなかったし、異動や転職を決意した間接的な理由にもなるのだけど、この人は例外的に好きだった。相変わらず知性があふれていて、素敵だった。一緒に仕事していたころはよく現場から世田谷線で一緒に帰ったことを思い出した。あの頃は月平均80時間ギリギリの残業に毎月追われていて、この人はエンタメものづくりの楽しさをひたすら見出すような方だった。ちょっと美化しているだろうし、2度と同じ仕事はしたくないが。

ディレクターと別れ、元同僚ともんじゃを突いた。お酒は一滴も飲まなかった。三人の仕事の話を適当に織り交ぜつつ、本題ともいうべきライフステージの話へ。夫が悪酔いしすぎて警官に暴言を吐き捨てまくり、早朝 自宅に警察官が訪ねてきて署で留置されているという夫を迎えに行った話がめちゃくちゃ面白かった。笑いすぎて涙出たけど、当事者は身内にそんな恥ずかしい一面があったなんて、とその事件のことを誰にも話せなかったらしい。

この二人は自分が秋に恋人ができたタイミングでちょうどその報告をしたので、その後の顛末を話した。24日なんで空いてたんですか?(ニヤニヤ)という感じで聞いてきたので、やっぱり勘付いていたか、と。体調不良だった元恋人をそっとしようと思って自分からの連絡も控えていた、という話をしたところ「本当に大事な人だったら自宅に行くなりなんなりしたんじゃない?」「その程度の関心だったってことじゃない?」と立て続けに分析され、全く自分では意識していなかった解釈にびっくりした。そして、確かにそうだったのかもしれないと過去の自分の気持ちがわからなくなる。当時は全く意識していなかったけど、元恋人に会えない1ヶ月の間めちゃくちゃ映画見てたし、それも彼女にフォローされていたFilmarksで連日投稿していたし、向こうからしても蔑ろにされたという感覚だったのかもしれない。正解かどうかはわからないものの、体の奥の潜在意識をまさぐられて摘出された気がして、少し体が軽くなった気分。

同僚二人の結婚の話、子供を持ちたい話などをたくさんした。二人とも6,7歳年上だけど、自分の姉と同世代だからきょうだい感覚で話してしまう。30代40代になったら男性はどんどんモテるよ、という与太話をまた聞かされた。「それは20代までにちゃんと恋愛できた人がひとやすみを置いた結果じゃないんですか?」と真顔ですごんでみたら、(たしかに、まあ・・)みたいな顔をされて話が途切れてしまった。でもこの話の着地点はいつも「そんなネガティヴな男性はそもそも好かれない」なので、自分の敗北をこの日も認めるなり。誰と戦っているのやら。この論法で全人類を論破できれば、確かに恋愛できない人としての地位が固まるかもしれない。

仲の良い女性と話す恋愛話は不快にならなくていいなあ。自分の中のマチズモという毒素が抜けていくのを感じて心地よいが、抜け切ったらそれはそれで恋愛をする上である程度苦労しそうだよな、という矛盾も感じてはいる。まあ、きょうび男性性を恋愛に求めるような女性は少数派になりつつあると思っているけれども・・

年明けに自分の誕生日があるので、今度はそれを祝ってくれることに。うれしい。そういばこの日M1があったことを後日知った。もう最近のお笑いが全くわからない・・。テレビとお笑い、密接すぎる!

12/25(月)

前日の飲み会はかなり軽いものだったけどこの日は在宅にした。オンラインでMTGをして適当に済ませて退勤。意外と仕事が終わらない。

夜、最寄りの映画館で「ストロベリー・マンション」を鑑賞。特段ここに残すべき感想はないと思う。この特集企画、結局2本しか見られないことに。全部見たかったな。

12/26(火)

出社。職場で大掃除をした。掃除男子だねえ!と言われた。一人暮らしなんだから掃除くらいするだろ。世の中の人は意外と掃除が嫌い?なようで、特に苦痛に思わないことのは自分の長所だな。特に汚れもなく、掃除しがいはあまりなかった。

その後仕事をして、適当に退勤。帰りは放浪記を読みながら中島みゆきを聴いてゆっくり帰った。

12/27(水)

フォーマルな格好と毛皮のマリーズで出勤。クライアントの納会に参加しないといけず、ひたすら億劫だった日。適当に挨拶を済ませ、世間話をするだけなのに相手の顔色をうかがったりして、疲れる。一緒に付いて場を回してくれていた同期が途中で居なくなってしまったので、非常にあたふたしながらも上司と一緒に行動した。顔が広い上司は色々な人を紹介してくれた。彼は酒に酔っていたので、またいつもの通り自分のことをかなりよく紹介してくれる。今後その人と一緒に仕事するようになってメッキが剥がれるようなことしかないと思うんですが。

その上司と元々同僚同士だったグループに混ざり、色々と談笑した。全員40代も後半またはそれ以上のベテランばかりだったけど、みなさん受け入れてくださってよかった。お酒に酔って自分をねじ込んでくれていた上司に感謝。だんだん人も少なくなってきたので会話の流れを断ち切るように立ち上がり、自分もその場を後にして帰宅した。本当は定時よりも前に退勤できた予定だったのに、中々抜け出せず結局いつもと同じ時間。映画を見ようと思ったが、納会のために無理やり巻いたゼンマイがキリキリとずっと動いている気がして、帰ってはやく気を鎮めたかった。

TOMOOを聴きながら帰宅。帰宅後はなぜかみらんのアルバムを聴いていた。久しぶりにマッチングアプリの有料会員になった。これまで費やしたお金は計算していないけど、ちょっとした旅行が行けるかもしれない。この新シーズン、ダメかも。。

12/28(木)

出社。だいたい仕事は収まったので暇だった。デスクで一本映画を試写した。翌日は有給だったので退勤間際に部長へあいさつへ。その心意気が偉すぎる。翌日のパーティや部の忘年会には出ないの?なんで?と言われ、適当に嘘をついた。姉が帰ってくるんで・・と。まあ、ばれてるでしょうけど。あまりこっちを見て話してくれなかった部長のことを心の中で睨みつけた。

退勤して鍋を作って、PERFECT DAYSのパンフを読んで就寝。

12/29(金)

全社的な有給奨励日のはずなのに現場から立て続けにトラブルの報告があって朝からうんざり。同じく有給だった同期からも電話がかかってきて、寝起きだったので内心(どいつもこいつも朝からうるさいな・・)と思ってちょっと雑に受け答えしてしまったかもしれない。お昼から映画を見る予定だったのでちゃっちゃか処理をして新宿へ。

「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」を鑑賞。ゲラゲラ笑った。今年一番笑った映画かもなあ。印象的なシーンとかは特に覚えてないや。自分がテレビ番組で笑えていた時代のコントを見ていた感覚に近いかもしれない。

終映後はまた別の関連トラブルの連絡が来ており、本当に勘弁して欲しかった。自分が有給だろうがなんだろうが、他に対応できる人がいないからしょうがないし、自分自身には非がないので怒りを鎮める。もっと前から対応できたはずなのに、年明けすぐデッドラインが設定されているそんな年末年始進行のスケジュールおかしいだろ。技術のこと以外はてんでダメな現場チームの人たちに映画館から怨念を飛ばした。社用携帯で海外にメールを飛ばした。自分、対応力あるなあ。

前の仕事に比べたらこんな案件本当になんでもないレベルなのだけど、今の仕事しか知らない同期やチームメイトたちはこの世の終わりかってくらいの反応をする。今の仕事で最も大変だったと言われているエピソードは、感覚的には前の仕事では日常的に起きていた気がする。"大変自慢"は恥です。自分は「2年前の地獄を見てきた者達だ 面構えが違う」です。こないだまでわたし調査兵団だったんですよ、憲兵団のみなさま・・

今度こそトラブルシューティングを済ませ、「サンクスギビング」を鑑賞。「グリーン・インフェルノ」の監督新作ということで興味本位で見に行ったけど、さほど面白くもショッキングでもなかったな。あまりスプラッタ系の映画は劇場で見てこなかったので試しに行ってみたけど、今後も配信で十分だった。あまり見応えなかった。

・・・

夜、会社の同期入社組が集まる忘年会に。みんな全社パーティに参加していたので正装だった。有給をとって映画をみていた自分がズレているんだと早速認識した。

会話の詳細を思い出せるほど実のある会話はなかったはずだ。会社や業界のすごい人の話、女性の同期が結婚したとか、彼女ができた、彼氏ができた、同棲をはじめた、明日はじめてマッチングアプリの女性と会うとか、そういう話だけじゃなかったか?自分に話を振られることはあまりなかったけど、やはり恋愛のことは全員に聞くようなグループのようだった。好きな人たちではないものの不信感も別になかったので、嘘をつかずにこの秋の件を話した。みんなを笑わせるほどのエピソードトークなんてないんだよこっちは。他人と共有する話のために恋愛に臨んでるんじゃないんだわ。

本当に何の会話をしていたのか思い出せない。アメリカに留学したとき、断片から会話の流れ自体は把握できるものの、話している言語が違うから表情や声量から判断しないといけないことが多すぎて疎外感にまみれたのを思い出した。完全に同じ。日本語を話している人たちのはずなのに、まるで外国人に囲まれたときのように萎縮してしまう。自分の等身大の語彙が伝わるわけないので、ユーモアもエスプリも欠いた小学生のような言葉しか口に出せない。そういう言葉は声量を伴わないと面白みが伝わらない。みんな単純な言葉を大声で交わして、ゲラゲラ笑っていた。テーマも性や子育てのことばかりで、これってヒトの原初のコミュニケーションじゃね?と思いながらその様子を眺めていた。

一次会の次は二次会のカラオケへ。興味本位かつ断りきれずついていったのが間違いだった。狭い部屋で相変わらず怒号でコミュニケーションがなされる空間、地獄すぎる。コミュニケーションっていうか、もう完全に石の投げ合いで一方通行なんですよ。大声で笑わせたものが勝ち。原始人時代の宴会かて。一緒に少人数でカラオケにいったこともある同期もいたので、自分がしっかり歌える人だということが知られていたのもまずかったな。気を使ってデンモクを回してくれる人、一緒に歌ってくれようとしれくれる人がいた。歌うことに抵抗感は全くなかったけど、なぜか自分の声をずっとマイクが拾ってくれないという事態にどうでもよくなって歌うことを諦めた。それでもなりふり構わず盛り上がり続ける同期たち、すごいなあ。

大学生のコール文化を引きずっているとある同期が、パチンコ屋の店員のように大声+マイクの拡声で訳のわからないことをずっと替え歌していた。あー、彼本当につまらなかったな。彼はこの同期の飲み会に参加すること自体が珍しかったらしく、常連の中心人物数名が「あいつのノリ、やっぱなんか違うよね・・」と解散後ブツブツ言い合っていたのが面白かった。何が違うんだよ。結構同じに見えたよ。同属嫌悪なのかもしれないけど、一応そういう文化を嫌う文化的な側面を持つ人たちも確かにいたな、と再発見できた。この同期たちは3,4人くらいの少人数だと居心地いいんだけどね。

この時点で深夜も更けており、カラオケの光と絶え間ない大声と眠気で頭痛に苛まれた。途中喫煙スペースで長めの休憩をしていたところ部屋で心配されていたらしく、同期が迎えに来てくれた。楽しくなさそうに見えたかなあ。申し訳ないなあ。でも楽しくないから喫煙所に避難しているしなあ。とぐるぐる思いながら部屋に戻った。その後30分くらいただ耐える時間が続き、瞬時に体力が尽きたのか、瞬く間に解散の流れに。動物的すぎるだろ。

一次会の飲み会もそうだったけど、「おもしろいシーンを動画にとってインスタにアップする」のすべて、0から100までのその思考回路のすべてが全くもって何一つ理解できなくて、いつもつらい思いをする。スマホを持つようになって10年ちょっと、学生のときからずーっと思っていた。なんでみんな録るの?あと、それを見せられて面白い人って、その場にいた人たち以外にいるの??見返したら面白いっていうのは何となくわかるな。はあ、自分が歌っているところにスマホを向けられ、動画を取られ、勝手にアップロードされるんだなあ。別にいいけど。でもわたしは君らのフォロワーのために歌って存在しているんじゃないんだが。

やっぱよくないわ。普段知り合いはインスタグラム上でその好き嫌いに関わらず全員ミュートしているが、これを書いている現在、ミュートした人たちのストーリーが追いやられている右のほうまで久しぶりにスクロールしてみた。おおきな石を裏返したときに虫が蠢いているように、きのうの飲み会の様子が色々な参加者の視点から動画として投稿されていた。はあ、気持ち悪い。写真には全く嫌悪感はないから、その差は何なんでしょうね。

・・・

解散後ラーメンを食べにいった組と別れてタクシーで帰宅。自分が最後に降りたから同乗者に請求しないといけないんだけど、誰にも連絡したくなさすぎてこのまま手切れ金にしようかとも思っている。どうしよう〜。

事の発端は唯一年に1,2度くらい会っている同期の中心人物から誘いがあったことで、それ自体は恐ろしくも嬉しくもあったし、恋人が蒸発して破れかぶれだったからたまには、の気持ちもあった。下半期に観た映画では続けざまに世間とのズレを「異星人」「地球に留学している」という表現で表していたのが強く印象に残っているのだけど、その心持ちで参加したフィールドワークのような忘年会だった。違う文化ステージに生きている人との言語・思考のすれ違いをストレスに感じたのはもちろんのことで、それ以上に二次会のカラオケで感じた身体的・体力的な差が本当にしんどかった。自分は次の日が休みだろうが12時には就寝しているので、夜中まで全力でカラオケを楽しむ、という行為自体が体に障るんだよな。一般的な20代後半のみなさん、どうなんですか。

2度と行かね〜と観念したけど、誘ってくれた同期はカラオケの喫煙所などで寄り添いを見せてくれた。でも彼も部屋に戻ると楽しそうな表情で歌っていたので、やはりそちら側の人間なんですよ。こっちに合わせていただく必要はどこにもない。

そういえばその同期が、こういうカラオケのときのために最新の流行曲も聴いている、自分はもう拗らせから脱した、と言っていたのを覚えている。みんなが歌っている曲が全然わからなかったけど、それは自分がインディーズばかり好んで拗らせているからか。すてきな歌を真似て歌うこと、詞を読みながらなぞって聞くこと、それも拗らせか。それを拗らせと判断する人たちが、音楽や映画や文化のことを語って、カルチャーを創出するこの仕事に就いているのか。そんなのが文化なわけあるかぼけ!ぼけかす!

・・・

帰宅して余っていたカップ焼きそばを食べて4時ごろ就寝。土曜は「NOCEBO ノセボ」で新作映画納めをしようと思ったけど、昼過ぎまでベッドから出られず、夕方現在これを書いている。

 

音楽と週報 vol.39 2023/12/16〜12/22

1 odol 22 scrobbles
2 チャットモンチー 13
3 Mellow Mellow 11
4 家主 11
5 DSPS 10
6 Maustetytöt 10
7 Marky Mark and the Funky Bunch 9
8 大象體操 9
9 WOOZE 7
10 フーバーオーバー 7

「枯れ葉」出演のフィンランドのユニット、家主の新しいアルバムなど。

 

12/16(土)

午後の回から「枯れ葉」を鑑賞。まさか全ての回で満席だとはまったく思わなかった。カウリスマキは下ぶれることがまったくなくていいな。中年男女が苦汁を嘗めながら恋仲になっていく様、ただのラブコメではなく社会の世知辛さを伴っているのがいいよね。しかも説教くさくなくて、カウリスマキの人柄がうかがえる。パンフを読んで知ったが、いつかフィンランドで彼が経営する映画館に行ってみたい、とちょっとした夢ができた。

帰宅して「ターミナル」を鑑賞。久しぶりに「観なければ」のカテゴリに入れている不朽の名作。普通だった。

注文して数週間?くらい経っていた途中さん著「自由研究 子のいる人生 子のいない人生」を読んだ。一般人のエッセイとは思えないほどに考え方が明瞭かつ一貫していて、普段からこのテーマを命題に生活しているんだろうなあ、と想像できた。社会の期待に応えられない焦燥感だったり疎外感をロジカルに深掘りし、さらに正解の道を迂回して進むという提案までなされていた。このテーマのみならず、あらゆるレールの傍らに立ってまごまごしてしまう人間は読むべきだろう。文体もあっさりしていて、つい難しい言葉で飾りたくなる自分の文章を見返して少し恥ずかしくなった。

たしかこの週末あたりからTinderをインストールした。同僚が、顔写真も載せずに好きな映画の羅列のみをプロフィールにしていたところ、マッチングできた女性と付き合っている、という話を聞いた。ちょっと希望を持って真似事をしてみるも、デジタル酒池肉林に辟易して続かない。というか1km圏内にいる人間が多すぎて怖くなる。

odol、いいなあ!移動中ずっと聞いていた。

12/17(日)

午後?の回から「バーナデット ママは行方不明」「バッド・チューニング」を連続鑑賞。リチャード・リンクレイターが「スクール・オブ・ロック」の監督とは知らなかったので助かった。そういえば前に遭遇した同期から見に行きたいんだよねとLINEが来た気がするが、別に一緒に見ようとは言われてないからいいか、と思って適当に返したのを思い出した。劇場内をちょっとだけ見回すも、彼の姿を確認できなかったので胸をなでおろした。

夜、カウリスマキ「真夜中の虹」を鑑賞。まだちょっとだけ見ていない作品があるから、年末年始くらいに全部みたいな。

12/18(月)

前日に見た「バッド・チューニング」の曲がどれもこれもめちゃくちゃよかったので、そのプレイリストを聴いて出勤。仕事、自分の盛大な勘違いで先方への心証が悪くなった。人間性を疑うメールが返ってきたしう、自分と関連部署半々くらいに責任が分かれる事案だったので、モヤモヤして退勤。ccに入っていた同期から叱られた。後輩くんの退職祝いを買いに日比谷に寄った。みんなから嫌われていて誰も送別会の予約もギフトの話もせず、ただただ「送別会やらないの?」と言われ続ける無責任な態度に嫌気がさしていた。お店予約担当の同僚とはチャット越しに意気投合していたと思う。チーム長も「いなくなってせいせいする!」とオフィスで大声で言うものだから、それはマネジメントする人間として終わってるだろ、と心の中で蔑んだ。一方で彼の引き継ぎがめちゃくちゃすぎてそれはそれで迷惑なので、極力苛立ちを隠して修正に付き合った。

12/19(火)

問題のある取引先とのMTGがあり、先方が招いたトラブルについての認識がかみ合わず、ただ疲れた。強情というか、常識が通用しないというか、同じ言語を話すというだけで、思考のすり合わせができるとは限らない。そういう場合、日本語を理解する外国人のようなものか、と自分を納得させることが多い。

後輩くんの送別ランチへ。ちゃんと転職先も決まったようで安心した。全体的にピリピリしており、チーム長の堪忍袋の緒が切れてランチ中に引き継ぎのダメ出しをキレながら指摘していたのが最悪だった。

定時間際、部署の全員に対して退職のスピーチがあり、そこで後輩くんが述べた仕事のモチベーションの話にちょっと感動した。なんとか適材適所になるといいな。

その後、前部署で一緒に働いていた派遣社員の送別会に参加。寿退社らしい。大学のときお互い一目惚れとかなんとか、みたいな馴れ初めをみんなに嬉々として話していたけど、遅れて参加した自分は席が離れていてよく聞こえなかった。近くに座ったところで聞きたくもない話でそれが態度に出ただろうから、逆によかったかもしれないけど。誰と何を話したかあまり覚えていない。非常に濃度の薄い会だった、でも彼女にはたくさん助けられたし、人格も能力も素晴らしい人間なので、どうか幸せになってほしい。自分とは交わらないタイプの人間だったな。

いまの会社で一番仲の良い元同僚から解散後に忘年会しようと誘われ嬉しかった。24日の予定が埋まる。お互い男女の仲にならないとわかりきっていて日程も滞りなく決められて何より。恋愛映画だったら、画面が分割されてお互いが就寝前に(これ、デートじゃない!?)と思うカットがあるだろうけれど、そんな甘くないのよ。

12/20(水)

打ち合わせがあり出社。今年お世話になった会社とMTGをし、昨今の映画事情を楽しく話せてよかった。たまに公私混同してるけど、まあいいでしょう。こういうことがあると仕事が楽しくてしょうがない。

それ以外は特になにも覚えてないかも。大事なことがいくつか起きた週だったはずだけど。

家主の新しいアルバム、よかった。「CからはじまるABC」でえっちゃんがフィーチャーされていてよかった。忘れらんねえよ、もう何年も聞いてないけど。それ繋がりでチャットモンチーを聴いた。邦楽ロックを久しぶりにたくさん聴いた週だったかも。

12/21(木)

在宅。特に覚えてない。昼寝した。クライアントごとに明らかにモチベーションの差が出始めてきた。ない方の仕事、めちゃくちゃ雑でやばい。エレファントジムを流して仕事。

退勤後「ミークス・カットオフ」を鑑賞。ポール・ダノとゾーイ・カザンが話しているシーンがもっと欲しかったが、相変わらず寡黙な作品だ。ケリー・ライカートはインディアンに何か思い入れでもあるのだろうか。ラストのあのカットは美しかった。

12/22(金)

なんとなくDSPSを聞いて出勤。台湾のフェス行きたいなあ。夕方から2月公開のとある大型新作の試写に行く予定だったが、仕事が重なり断念。もう公開前に参加できないかもしれない。一度も話したことのない人が退職するらしく、その挨拶で盛り上がっていた。つい数日前の後輩くんのときとは大違いだった。おもろい。

試写に参加できなかったはらいせと、週末は絶対に混むと見込み、「PERFECT DAYS」を定時退勤してみに行った。いやあ、よかったな〜。ヴェンダースの作品をひとつもみたことがなかったので不安だったが、役所広司に涙。めっちゃ涙。でも柄本時生が演じた役の造形が微妙だったのは否定できない。なんなんだよあの雑なキャラデザ。それとこの映画の企画に日本の広告代理店の動力がかなり働いているらしく、それも所々チラついて嫌だった。

でも柄本時生がフェードアウトしたり、中盤以降だんだんピントが合うようになった。それからはひたすらいい作品・・と吐息を漏らしながら鑑賞。自分を鏡写しで見ているかのような役に、自分の存在が照らされたような感覚を覚えた。すばらしかったです。

その後映画館の近くで家系ラーメンを食べた。いつもより油分が多かった気がした。

・・・

この週、「放浪記」をかなり読み進めた。好きなフレーズに出会ったらそのページの角を折るようにしているけど、それを見返すのもまた面白い。逆境をユーモアに変えて飛ばしたり、どん詰まりの人生を独特の感性と的確な言葉で表現する林芙美子にどっぷり浸かっている。はあ、好き。。。。

 

週末は「ファースト・カウ」「ショーイング・アップ」を見に行く。あとは配信と、3月の新作を試写予定。

音楽と週報 vol.38 2023/12/9〜12/15

1 METAFIVE (高橋幸宏 × 小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井) 34 scrobbles
2 さよならポニーテール 25
3 エレファントジム 22
4 フーバーオーバー 17
5 人間椅子 17
6 THE NOVEMBERS 9
7 大象體操 8
8 ドミコ 5
9 andymori 4
10 Ginger Root 4

12/9(土)

朝一の回でヴォルテックスを鑑賞。快眠できず起き抜けに首を痛め、それにうなされながら見た。いやあ、かなり良い映画だったけど首が痛くて集中できず、途中寝た。悔しい。バイオレンスもセックスもないギャスパー・ノエの新作、静謐で苦味がたっぷりだった。

その後一度帰宅。最寄りの商店街でメンチカツを買って、昼寝して、週報を書いた。夜、東中野ポレポレで「王国(あるいはその家について)」を鑑賞。初日だったようで、また舞台挨拶回だった。これは好みが分かれる作品だけど、個人的にはかなり良かった。ぱっと見何をモチーフにしているのかわからないモダンアートの解釈を自分なりに編み出せたときの快感に似ている。濱口竜介が絶賛しているらしいが、恥ずかしいことに彼の作品はひとつも見たことがない。勉強不足である。シナリオブックも購入してサインまでしてもらった。気になっていたことを質問してみるも、全然伝わっていなかったようで会話が噛み合わず、悲しかった。

12/10(日)

午前の回で「市子」を鑑賞。思いの外良かった。杉咲花の怪演は言わずもがなで、若葉竜也が結構好みかもしれない。ただ今後の人生でずっと記憶に残るかと言われれば、そうでもない気がする。エンタメ、サスペンス作品として良かったな。社会の中で可視化されない人たちの存在を描いた作品にしては問題提起の声量がとても小さく、見やすかった。あくまでもサスペンスを引き起こすその要素のひとつとして、という印象。

その後渋谷に移動し「最悪な子どもたち」を鑑賞。かなり期待していた作品だったけど、拍子抜けもいいところ。テーマや画も好みだったけど、あまりにも荒削りすぎる。なんというか、これから編集やブラッシュアップが重ねられる前の初号試写の状態を見せられている気分。良い作品だと思うんだけどな・・

さよならポニーテールを聞いて帰宅し、夜、ツイッターで話題になっていた「終わらない週末」を見た。特に語ることない。。イーサン・ホークのダメパパ感が良かったなあ。見ても見なくても人生にはなんら影響を及ぼさない瞬間的なエンタメ作品。

12/11(月)

さよポニとMETAFIVEで出社。この週、METAFIVEにどハマりして配信されている分を改めて全部聞いた。会社で週末に見た映画の感想をまとめた。仕事は覚えてない。イタリア人から2週間以上返事がなくてモヤモヤしていた気がする。

12/12(火)

METAFIVEで出社。かっこよすぎ。朝一の打ち合わせが中止になった。先方には週末に見た映画の話をしたくてしてくてたまらなかったのだが、残念。今月で退職する後輩くんの引き継ぎMTGをチームで実施し、チーム長が常にブチ切れていて気の毒だった。でも後輩くんの資料はめちゃくちゃだし締め切りも守らないしで、自業自得でもある。前部署の経験をフルに活かせており、さらにそのテクニカルな仕様を把握できている人間も今の部署にはほとんどいないということで、自分がプラスオンの仕事を任されがちだし、自分から首を突っ込んでしまうことがある。なぜなら最も面倒とされている社内クライアントの怪人と向き合っているのが自分だから。とても歪な構造になってきた。とはいえ残業代がしっかりと出るようになったいまの勤務体系なら、多少の業務の増加はやぶさかでない。

お昼、別チームの人から唐突にお昼に誘われてラーメンを食べにいった。おいしかったな。その人は以前の飲み会で恋人ができたことを明かしていたので、顛末を話した。あっけらかんと「短くない!?」と反応してくれてよかった。「じゃあ風俗でもいってさ、」と優しく爽やかに言うので、そこはきっぱりと否定した。行かない理由がちゃんとあるわけではないんだけど、その分の時間・金額・満足感を想像すると映画の1本でも見たいと思ってしまうね。飄々として飾らないこの人と話すのは楽しいし、向こうも声をかけてくれるのが嬉しい。恋愛などのパーソナルな部分に触れられるのは普通抵抗感をおぼえるものの、この人ならまあいいや、という感じ。

適当に帰宅、賞味期限がギリギリだった豚肉と買い足した鶏肉を突っ込んで鍋。

12/13(水)

夜からパーティがあったためややフォーマルな格好で出社。嫌い。。

肝心のパーティは本当に最悪で、今後もこういった過剰な演出が仕事につきまとうなら本当に転職したいと思った。名刺を5枚しか持っていなかったことに直前で気づき、チーム長から怒られた。名刺交換会みたいなものだからね、と同期から諭されるも、そんな架空の存在かと思っていた会にこれから出席しに行く実感が湧いてきて、嫌だった。現場ではとにかく一番偉い人用に名刺を残しておかなければならないという使命感から、極力挨拶を避けて同僚の陰に隠れていた。相手からしたら本当に謎の存在で、ただただ無礼でしたでしょうね。

結局挨拶すべき人が見つけられないくらいの人混みに揉まれたりしながら途中でどうでもよくなり、直近でお世話になった好きめの取引先さんたちの紹介に立会い、名刺を渡した。200人以上いる関係者のうち3人とだけ挨拶をし、名刺は2枚余った。何しに行ったんだろう。旧知の人間たちと話したり、自分と同じ時期に入社した新参者の同僚と一緒に過ごしたりしていたが、同伴していた同僚たちのそれぞれの挨拶タイムがはじまった途端に孤独になり、ああ立食パーティっていつもこんな感じだったね・・とポツーンと立ちすくむ時間が多かった。お手洗いへ辞去したついでにこっそり喫煙所に避難し、20分ほど休んだ。

前の部署の上司たちも参加していた。自分は招かれるゲスト側で、彼らはホスト。今の上司や同僚・自分・前の上司たちというキモすぎる構図で会話を交わす時間があった。今になってもなお自分が担当していた仕事のボロが色々見つかっているという前上司の発言に対し、今の部署ではたいへん活躍しているということを各所に触れ回ってくれている現上司の発言を比べて、いまの部署に異動して良かったなあ、と胸をなでおろす。前上司は酒に酔っていた。彼は同期に触ろうとしていて、それを現部署の別の上司が「ボディタッチはダメですよお〜w」と制していた。その一連のやりとりに吐き気を催した。「セクハラをする、それをセクハラですよと制する」という様式美はこの世から早急に滅んでほしい。前上司は武勇伝や僕と過ごした時間の苦労話を饒舌に話していたけど、それを一蹴するような快活さで現部署の上司が取り合ってくれたのが爽快だった。はあ、短い時間で前の部署のことがとっても嫌いになった。

そして同行していた同期とは、会場に着く前にぐちぐちと参加したくないと言い合っていたが、パーティ終了後に話したところたくさんの偉い人たちと挨拶できた!と嬉しそうに名刺を見せてくれた。君はそちら側の人間です。とある談義中、上司が「こいつは人前に出たりこういう大人数でガヤガヤするのが苦手なんすよね、それがいいところでもあり、弱点でもあるんだけど」と言っていた。嬉しくもあり、弱点かあ・・と克服を暗に求められていることを察してげんなり。「星明かりグラフィクス」に登場するデザイン事務所のエース西端のことを思い出した。自分にはクリエイティビティはないだろ。と「大勢の前には姿を現さない」をステータスに加えようとした浅はかな考えを振り払う。

締めの後はそそくさとひとりで退散。弊社のお偉も参加していたようで、その人たちを待たないといけない空気感も若干あったものの、気を使って早く帰ればと唆してくれた同期を脇目に退去。電車の中で本を読もうとするも、洗濯機のなかにいたような気分が収まらず、文字を追いかけらない。疲れで目が滑ってしょうがなかったのでピースメイカーのハードロックプレイリストを聴いて息を整えた。コンビニでカップ麺を買って食べ、最悪な1日だったと思い返しながら就寝。

12/14(木)

在宅。MTGや評価面談が続いてやや疲れた。いまの上司、評価面談がゆるくて助かる。というか、なんとなく自分の仕事ぶりが評価されている気がして安心できる。18時から緊急の相談案件があるとMTGを持ちかけてきた社外の取引先のせいで退勤が遅れた。MTG中にお米が炊ける音が鳴って恥ずかしかった。映画を見られなかった。

エレファントジムのニューアルバム、めっちゃ良かった・・

疲れが溜まっていたので早寝。最近睡眠の質が落ちまくっている!

12/15(金)

出社。カルディのノエル?とかいう期間限定のコーヒー豆、めっちゃ好き。後輩くんの引き継ぎMTGに参加した。引き継がれる人間はほかにいて、間違ったことを言わないかどうかの視察役としてだった。後輩くんと引き継がれる派遣社員さんとの相性が最悪だといつもはたから見ていて思う。後輩くんの説明がしどろもどろすぎてわからない。説明に付属語が多すぎて、本質がまったく伝わらない。一度来客の対応挟み、第2部までもつれ込んだ。

取引先とのMTGではシネフィルっぽい会話をたくさんできて嬉しかった。素敵な贈り物をいただいたので大事に飾ります。

その後引き継ぎMTGに戻るも、どうでもよくなって会話を聞かずに自分の仕事を進めた。

まったく自分の仕事がおわらず残業していたところ、フロアに轟く声を響かせながら、社内でも有名?な社員がやってきた。最近までこの部署にいた人らしい。自分がデスクでガリガリ仕事をしている真後ろでその人とその囲いが出来上がり、耳を塞ぎたくなる声量で井戸端会議が始まって苦痛だった。業務上必要な動画のチェックと偽って人間椅子を聴いた。(そもそも誰なんだよこいつ、声でかいだけで話もつまんねえしよお・・!)と思ってそのエネルギーを燃料に仕事をした。すぐ近くに黙々と仕事をしている人がいることに気を利かせられない鈍さに辟易として、意地でもそっちの会話には加わらねえからな!と逆に集中できた。

黙々と仕事をしていたところ、別チームの新卒の女の子から声をかけられ、とても癒された。週末イベントで着ぐるみやるんできてくださいね、と言われ「本当に僕が現れたらキモいからいかないよ」と言った。かなり心が荒んでいてので。すみません。それにしても突然声をかけてくれるこの新卒さん、人懐こすぎて不安になるときがたまにある。とある男性社員のことを思い浮かべるも、男って本当にカスでクズでキモい人間ばかりだからいい顔ばかりしないように気をつけて、とも言えない。

わりと残業して退勤。

・・・

週末、ついにカウリスマキの新作だ。ああ、楽しみだ。そして最寄りの映画館でリチャード・リンクレイター作品を観る予定。あとは注文していた椅子が届く。ちょっとした仕事のイベントもある。心の疲労がかさんだ週。ゆっくりと休みたい。

 

音楽と週報 vol.37 2023/12/2〜12/8

1 キリンジ 19 scrobbles
2 Miyuki Nakajima 17
3 Suchmos 7
4 Ginger Root 5
5 フーバーオーバー 5
6 The Hives 4
7 Vulfpeck 4
8 YUKI 4
9 在日ファンク 4
10 Hathaw9y 3

12/2(土)

午後から吉祥寺「女優は泣かない」を鑑賞。都合のいい時間が全部舞台挨拶回だった。そんなに期待はしてなかったんだけど、それに見合ったちょうど良い邦画だった。特に今後記憶に残るタイプではないかな・・

吉祥寺で注文していたメガネを受け取った。最高すぎる。10万円という高価な買い物も日々身に着けるメガネだとまったく気にならない。

その後目黒に移動。大戸屋でれんこんの揚げ物を頼むも、脂っこさと量の多さに圧倒さてれ残した。食が細い。

目黒シネマのレイトショーでギャスパー・ノエ監督「アレックス」「クライマックス」を連続鑑賞。鮮烈すぎる映像に圧倒されて疲れてしまったが、作品のもつ質量に満たされた満足感もあり、良かった。唯一無二の特性を持っている監督で、目がまん丸になる瞬間も多々あるのだけど、なんとなーくテーマや本質といった部分を加味するとそこまで好きになれる監督ではないのかなあ、と思った。「ヴォルテックス」の予習を済ませた。

近くに座っていた女性が、幕間の休憩時間や帰りの電車でたびたび側にいることに気がついた。こういうのをチャンスに捉えて声をかけたりするオスのマインドが欲しい。

インスタグラムを見ていたら近所の古着屋の投稿にいつも一緒に働いている同僚のオフショットが映っていて驚いた。生活圏内が近いのではなく、このお店がその一部になっている音楽系の一味っぽい。見なかったことにします。

12/3(日)

二子玉で朝一「ナポレオン」を鑑賞。いやあ、合わなかったな。リドリースコットの商業的大作っていうテイストもそこまで見たことがなくて、作家性を好きになりがちな自分にしては合わなかったのかな、という分析をしている。

二子玉川が苦手な街になりつつある。街の造形すべてに作為を感じる。お昼ご飯をさくっと済ませられる場所が皆無でウロウロしていた。

その後渋谷に移動し「朝がくるとむなしくなる」の舞台挨拶回。これも狙ったわけではなかった。唐田えりかは遠目で見てもモデルとしてキラキラ輝いていた。女優として、芸能人としてまったく興味そのものが無かったから、東出との不倫報道もほぼ忘れていた。その復帰作的な立ち位置の作品ではあったけど、特に馬力を感じるようなものではなく、全体的にだるくてゆるい空気感が続く、よくある邦画。

中島みゆきを聴きながら帰宅して適当に自炊をし、カウリスマキ希望のかなた」を鑑賞。よすぎる。いま、一番好きな監督はカウリスマキかもしれない。

12/4(月)

中島みゆきを聴きながら出勤。仕事は覚えてない。暇つぶしに今年下半期にみた新作映画の感想をまとめながら仕事をした。

2023年のベスト曲を公募しているプレイリストに以下3曲を追加した。

・In my dreams / The Dinosaur's Skin

・横に縦に / ぎがもえか

・Bogus Operandi / The Hives

このプレイリストを聴いていて、HomecomingsやYONLAPAなどを追加している人たちもちらほらいて、勝手につながりを感じて嬉しくなった。

12/5(火)

Walkmanで出勤。チバユウスケの訃報に心が痛んだ。リアルタイムでファンである自覚はあまりないが、TMGEにめちゃくちゃ傾倒しているので、ショックだった。なんというか、伝説の真の終わりを目撃した感覚だ。TMGEを知って好きになった時からすでに過去のバンドではあったので、いま盛り上がっている追悼に参加したいという気持ちもあまりない。

津野米咲の訃報のときもそうだったが、もうこの人の音楽を聴けないんだな、と思うだけで気が沈む。なんとなくげんなりした気持ちで退勤、YUKIのプリズムを聞いて心がすっきした1日。

12/6(水)

在宅。新曲も少なかった。折坂悠太、Magic Drums and Loveの新曲は良かったな。パスピエはちょっと飽きが来ているかもしれない。

蒸発した元恋人がSNSサブアカウントを新しくこねくり回している様子を見つけてしまい、色々と馬鹿馬鹿しくなった。休職するほど体調不良で僕にリソースを割くような余裕がない、って言ってた気がするんだけどなあ。なんでちょっと保身というか、事なかれな言い方をしたのだろう。嫌なら嫌と言ってくれた方がありがたいのだが。とにかく、対話も何もなく突如蒸発する人しかいないのかこの世の中は。

そういえばもうすぐグソクムズの大事な大事なワンマンがあって、一緒に行く予定だったことを思い出した。思い出したというか、日が近づくにつれてそれが脳の領域を侵してきて不愉快。前の恋人もグソクムズのライブに行ったが、何か呪われているのだろうか、このバンド。聞いていると自分が嫌いになってしまうので、しばらく聞いていない。

そんなことをぐちゃぐちゃ思いながらも退勤してカウリスマキ「浮き雲」を見た。あまりの良さに心が浄化され、無事立ち直ることができた。本当に垂れ込めていた暗雲がぱ〜〜っと除去された感覚だ。カウリスマキ、本当にありがとう。「枯れ葉」も楽しみです。衝動的に呟いてしまったキモツイートを消し、YUKIのプリズムにハグしてもらって、すっきりと就寝。

12/7(木)

出社。この週のどこかで見つけた韓国のシンガーソングライターの名前がまったく思い出せず、韓国インディーを聴き漁っている記録が残っている。まったく思い出せず、モヤモヤする。最近、聞いている音楽の彩度が落ちている。あまりしっくりこないな。

仕事は打ち合わせをして適当に退勤。帰宅してボロネーゼを作って食べた。

12/8(金)

ウォークマンで出社。チーム長と同期のストロングウーマンが牛耳るチームに馴染めているのが大きいが、馴染めない人たちはかわいそう。でも自分は徒党から外れていたいので、後ろめたい連帯感を強いられるとげんなりする。

この日も例に漏れず、今後の環境の変化に対応すべく担務見直し業務が進んでいた。同期が仕切っていたところ彼女に呼ばれ、他のチームメンバーがすぐそばにいるからか、聞かれたくない部分を英語で話したり、スクリーン上にタイプして伝えようとしてきたり、中学生並みの仲間意識を植え付けられている気がして非常に嫌だった。何かよくないことを囁かれていると感づいたのか、その場にいた先輩女子社員が割り込んできてランチに誘われた。まさにあなたが担当している案件について、同期はヒソヒソと愚痴を漏らしていました。嗅覚すごすぎ。というかまあ、普通気づくか。嫌だなあ。

美味しい海鮮丼を食べ、スタバのコーヒーをごちそうしてもらった。何これ根回し??

瞬間風速強めのトラブルが舞い込んできたが爆速で処理。ムビチケをいただいた新作映画でも見に行こうかと思ったがちょっと残業したので断念、適当に退勤。

帰宅したら注文していた「自由研究 子のいる人生 子のいない人生」が届いていた。積読増えてきた。やばい。

林芙美子「放浪記」をちょこちょこ読み進めているが、なんとなくカウリスマキ的というか、労働階級の人生賛歌がユーモラスで、心地よい。薄給にあえぎ、生活が困窮している中で抱く絶望感が美味しい味覚で吹き飛ぶこの表現が好きすぎる。

こんな女が一人うじうじ生きているよりも、いっそ早く、真二ツになって死んでしまいたい。熱い御飯の上に、昨夜の秋刀魚を伏兵線にして、ムシャリと頬ばると、生きている事もまんざらではない。

なんて人間味溢れる素敵な表現でしょうか。

帰宅して生姜焼きを作って就寝。今回の恋愛もあっという間に霧散していったが、特に自責すべき部分が見当たらないので、早々に立ち直ってきている。かといって次の恋愛に臨もうとマッチングアプリを開いてみるも、これまでの実績としては「すべて爆裂四散」なので、データに不戦敗を突きつけられている感じがする。出会っておつきあいをする、そのスタートラインまではなんとなくすぐ到達できるのだが。気長に生きていきましょう。独身は嫌で、早く救われたいが、どん詰まりでも心持ちは晴れやかです。

 

週末は「ヴォルテックス」「王国(あるいはその家について)」「市子」「最悪なこどもたち」をみるぞ。うふふ。

 

音楽と週報 vol.36 2023/11/25〜12/1

1 Suchmos 32 scrobbles
2 カネコアヤノ 17
3 キリンジ 11
4 The Japanese House 9
5 スピッツ 9
6 フーバーオーバー 6
7 Esrevnoc 5
8 Nagakumo 4
9 ザ・おめでたズ 4
10 人間椅子 4

ほぼインフルだった週。何もない。

11/25(土)

午前の回で「愛はイナズマ」を鑑賞。恋人とみようという話をしていたがすべて霧散したので、間に合って良かった。間に合って良かった、一人でも見て良かった、そう思うしかないのが哀れ。演技力に圧倒される作品で、松岡茉優は「勝手にふるえてろ」ばりの熱量で突っ走ってくれて最高だった。でも石井監督の悪の描き方が本当に苦手だなあ。三浦貴大演じる助監督の「悪さ」がスカッとジャパンのそれというか、ただの必要悪というか・・。物語終盤の詐欺チンピラ集団の会話も、このレベルの監督が書き下ろしたとは全く思えないほど素人っぽくてめちゃ気になった・・

「ハグは存在の確認」ベタだけどそんなフレーズがバッチリ決まった秀作。普通に好きめの作品。

家系ラーメンを食べて、吉祥寺のメガネ店で衝動買い。その後3時間くらいかけて7駅ほどを歩いて帰った。家に着くなり倒れるように昼寝、起きたら熱が出た。

ただの疲れと思うことにして、なんか邦画が見たかったので「めがね」を鑑賞。荻上監督は今年の「波紋」がはじめてだったのだけど妙に個人的な好みと合致している。作為の少ない会話と長回しのカットがかなり性に合ってる。市川実日子加瀬亮、よすぎるなあ。キャスティングも好みだ。

お湯をためてお風呂に入り早寝。

11/26(日)

起床したらめちゃくちゃ気分が悪く熱もあった。1日休んで終わり。「サムシング・イン・ザ・ダート」「マイマザーアイズ」を観る予定だったけどいけなかった。まあ、そこまで期待していないから良かったけど、。

11/27(月)

体調不良で休んだの、めちゃくちゃ久しぶりだったなあ。病院に行ってインフル確定、無限に寝た。処方された薬が「タミフルの100倍」と言われて面白かった。薬剤師さんがめちゃくちゃ優しくて泣いた。寝すぎて腰を痛めた。夜、ちょっと気分も良くなったのでケリー・ライカート「リバー・オブ・グラス」を見た。まあまあ好き。

仕事で上司や同僚がめちゃくちゃフォローしてくれて感動した。これがちゃんとしたビジネスパーソンか。一方で12月に契約を切られる後輩くんがアウトローな有休消化をしており、てんやわんやだった。

日曜▶︎月曜と音楽を1曲も聴いていなかった。珍しい。

11/28(火)

朝起きたら前日より悪化している気がして、熱を測ったら上がっていたので引き続き欠勤。体調不良で2日も休むなんて!とにかく寝まくったら夕方に平熱に戻った。引き続き体調は悪かったので静養につとめた。味覚が死んでいたのが辛かった。夜、まだ見ていなかった「すばらしき世界」を見てボロボロ泣く。アパートの外で決闘するシーンはなんか微妙だった。でも役所広司って本当に良い役者だなあ。Perfect Daysも楽しみだ。

11/29(水)

起きて熱が下がったので、本調子ではなかったものの仕事もしたかったので復帰。仕事した。上司と同期のフォローのおかげでスムーズに戻れた。感謝。。夕方Suchmosを流した。THE BAY、オールタイムベストすぎるな。「GAGA」の再発見に至った。「アメリ」をついこないだ見たから、改めて認識できる歌詞も増えた。

11/30(木)

在宅。仕事して夜「かもめ食堂」を見た。荻上イズム、健在。色々なつらいことをハグされた気持ちになり、ボロボロになってしまった。何が起こるわけではないのに、大好き。

12/1(金)

Spotify恒例のアニュアルまとめ。

一番聴いた曲はホムカミの「US / アス」。納得。

一番聴いたアーティストはグソクムズ。納得。。

今年はまったく新規アーティストにハマらなかった珍しい年。グソクムズは曰くつきになりつつある。苦い思い出が増える。今年の音楽まとめるのもなんか億劫だなあ。いつもと変わらないラインナップだし。

映画を見ようと思ったけど仕事がまったく片付かず、21時くらいまで残業して退勤。ライブに行きたい。週末は5本くらい劇場で見たい。平日のレイトショーもうまく噛み合わなくて、まったく追いつかない。

音楽と週報 vol.35 2023/11/18〜11/24

1 フーバーオーバー 28 scrobbles
2 H 3 F 27
3 The Wisely Brothers 24
4 The Pillows 15
5 ぎがもえか 14
6 Homecomings 10
7 YONLAPA 8
8 在日ファンク 7
9 キリンジ 6
10 Polta 5

 

インフルに罹患してしまったので簡易版。

11/18(土)

アメリ」を鑑賞。爽やかで可愛らしかった。その後「ツィゴイネルワイゼン」を鑑賞。期待してごめんなさい、寝た。カニが一番良かった。というかユーロスペースだからダメだったのかも。

恋人と連絡が取れなくなって1ヶ月ほど経ったので、手紙感覚でLINEをしてみた。

また同期と最寄駅で会った。翌日、この最寄駅に引っ越してくると連絡があった。そうですか・・!

11/19(日)

朝一で「ぼくは君たちを憎まないことにした」を見た。なんだかスッキリしない感じ。でも良い映画だったな。新しくオープンした映画館で見たけど、めちゃくちゃ寒かった。

最寄の隣駅の蕎麦屋さんで天ざるを食べた。美味しかったなあ。目当ての古本屋さんで「ゴーストワールド」のコミック版を買って帰宅。

その後週報書いたりして、メーサーロシュマールタ監督を見た。ナインマンス、すごすぎ。

11/20(月)

出社。適当に仕事して退勤。恋人から連絡があり、体調が良くなく休職しているとのこと。僕の時間を無駄にさせてしまうから私のことは忘れていただいて大丈夫です、とのこと。どうしたら良いんですかね。どうしたらいいかっていうか、もう連絡とれなさそうだしどうしようもないんですが。別れたいならそういえばいいのにとも思ったりでショックな気持ちは特になく、しばらく凪の状態で過ごすしかないなあ。急にいなくなってしまう人しかいない。

11/21(火)

ゾンビ状態で出勤。覚えてない。ちょうど見返していた半沢直樹に救われる。

11/22(水)

在宅。半沢直樹S2の最終回を見た。夜、「マリとユリ」を見た。

11/23(木)

ゴーストワールド」「首」、メーサーロシュマールタ2本を見た。疲れた。劇場4本はさすがに無理だと学んだ日。

11/24(金)

出勤。上司とランチに行った。それ以外覚えてない。土日の映画を予約するも、インフルにかかるぞ。

映画『ゴーストワールド』異星人シーモアを解剖しようぜ

11/23(木)から劇場公開です。当時の公開時のことは全く知らないけど、今年に入ってから何となく界隈で"リバイバルの機運"を感じていた作品。夏にはパッケージの再販もされ、思わず購入した。今年はたくさんの復活上映が人気だけど、1番賑わせるのはこの作品で間違いないと思っている。「アメリ」とは2001年も今年も公開時期が被ってて、めっちゃ素敵だよね・・

15歳とは到底思えない擦れ方をしているスカーレット・ヨハンソンへの注目はもちろん、ビビッドなプロダクションデザインやファッション、さらにはテーマの「生きづらさ」も上映前から色々なアーティストに取り沙汰されていて、タイムラインを眺めるだけでとても楽しい。何より「なんとなく生きづらい」というテーマは、今でこそちょっとずつその気持ちに名前が付いたり科学的に解明されたりしている。でも本当はもっと非科学的で感覚的で、名状できない鬱屈さのはずなんだけど、そのモヤモヤを抱えるキャラクターたちと肌感に近い距離を楽しめるのが魅力だ。

上映を待ちきれず再販DVDと重版原作コミックを購入してから望んだはじめての劇場公開、とっても良かった!やはり自分の、そしてみんなのバイブルになると確信しました。本稿では、シネフィル見習いとして、ビッグマックにもナイキにも馴染めないはぐれものとして、「シーモア」の存在について深掘りするよ。イーニドとレベッカはみんなの語り草だからね。

この記事のタイトルにちなむと、シーモアが自称した「異星人」とクソダサバンド「Alien Autopsy」から。シーモアが車中でイーニドに言ったセリフ、原文ではI'm not even in the same universe as those creatures back there. ー つまり「僕はそういう奴らとは違う世界にいるんだ」という意味なのだが、訳出を揃えてくれたクレバーな字幕に感謝している。やっぱり「異星人」と思うと気が楽になるっていう共感覚あるよね。つい先日公開の「正欲」でも全く同じことが言及されていた。地球に留学してるんですよ、我々。

このセリフ大好き

NOBODY LOVES ME...

それはそうと、映画版シーモアは主要キャラのひとりに加わっているが、原作だと登場シーンは多くない。映画版ではイーニドも絡む彼自身の恋模様が後半以降のメインプロットになり、原作にはあまり見られなかった人びとの"恋愛観"を投影する上で素晴らしい改変だと思う。

彼は数々の金言を言い放つが、どれもこれも「諦めた人を演じているけど本当は諦められない人」の生き方そのものを表している。恋愛が全くうまくいかない人生を歩んでいるカルチャー系の男性には刺さりすぎて大変でしょう。同類の友たちの心を揺さぶって共鳴させた、彼を構成する3大要素を並べてみる。


①自分には女性から愛される価値がないと思っている
とにかく自己否定に必死。恋愛がうまくいかなくても、自己否定をすることでそれが弁明になる。「自分にそんな価値がないからうまくいかないんだよね」は最強の自己弁護だ。
②でもチャンスがあるならそれにしがみつきたい
もしかするとどこまでもロマンチストで愛の探究者なのかもしれない。そうでもなければあんな広告出さない。しかし、真の行動原理は単純明快で、「まだ諦めきれていないから」だ。何かチャンスがあるなら「これで終わりにしよう」と、毎回懲りずにそう思っているはず。
③カルチャーが拠り所
自暴自棄になりつつも何だかんだでアクションを続けられるのはなぜか。それもまた単純で、彼には音楽という拠り所があるから。イタズラで出会ったイーニドとは(最終的にうまくはいかなかったが)真の愛を垣間見ることができた。そのきっかけも、彼がカルチャーを愛する男性だったからに他ならない。自分の好きなものを自覚して愛でることができる男性は素敵だ(意訳)と、イーニドが言ってくれたからだ。イーニド、我々が一番出会いたい人じゃないですか?

・・・
といった具合に、我々 非モテ文化系が少し前に「モテキ」で覚えた強烈な共感の系譜は、20年前の「ゴーストワールド」のシーモアというキャラから脈々と続いている。
まあ、いつの時代もいるんでしょうね。むしろ現代ではあらゆるカルチャーにアクセスしやすくなっているので、肩身の狭い思いもしなくて済んでいるのだろうか。趣味に生きるとか独身貴族といった概念が蔓延っていても、当事者たちからするとずっと苦しいんだけど。そうですよね?
・・・
それはさておき、結局ダナとの奇跡的な出会いに乗じてお付き合いしてみるものの、やはり趣味が合わないというか、「ビッグマックとナイキ」に阿るような関係性は築けないのだ。自分の好きなものは自分で決める。それがシーモアの流儀であり、イーニドが認めた彼のクールポイントでもある。散々自分に疎外感を植え付けてきたメインカルチャーに迎合するくらいのチープな恋愛は要らない、と決断できる姿勢こそ、シーモアが我々に見せてくれるひとつの生き方の答えのような気がしてならない。我々はそれに倣うべきなのだろうか。

GO, SEYMOUR, GO!!

とはいっても、相手はイーニドだ。シーモアもまさか自分を真に見出してくれた待望の人が10代の少女だとは夢にも思わなかっただろう。悩みぬいた末イーニドとの生活を受け入れる覚悟を決めたシーモアだったが、イーニドの心中はそう安定するものではなかった。彼女はシーモアを本当に慕っていた気持ちを告げ、町から姿を消す。

シーモアの描写で良かったのは、この一連の恋愛が成就しなかったことだ。これでイーニドもしくはダナと幸せな関係を築きました、だったら幻滅間違いなしだったと思う。

失敗してふさぎ込んでも立ち直り、家族や友人との関係は大事にするし、愛するモノへの情熱を忘れない。束の間の関係だったとしても、イーニドのように自分の生き方を認めてくれる女性がいつかまた現れるかもしれない。その日まで好きな音楽をまた蒐集して過ごそう・・そう思っているはずだ。破滅的なマインドで恋愛に臨み自己肯定感が皆無に等しくなっても愛されたい欲求は抑えられないのだが、「誰にも愛されなくてもいいじゃないか、僕のことをご覧よ」とシーモアに激励されている気がする。そして怒りや無念な気持ちとも向き合って、他人に当たり散らかさない。自暴自棄だったシーモアは最後、真にイーニドから愛されていたことを病院のベッドの上で知り、僕らにそう教えてくれた。
シーモアの理解者であったイーニドは、幽霊のように生きている。僕らが人間関係に積極的になれないのと同じ、またはそれ以上に、そもそも他者と深く交わることができない。それでもイーニドのように僕らを理解してくれる人たちがどこかにいるんだと、シーモアの物語が思わせてくれる。シーモアの物語は、ガールでもティーンでもない僕らに向けられた確かなメッセージだ。

青春からはぐれた男性諸君

この映画は青春ものです。キラキラの10代後半を冷ややかな体温で過ごす少女たちの物語として語られるし、今も絶大な支持を得ているのはやはりイーニドの存在が大きい。「解像度が高い」という言葉ではイーニドを表現できない。進学や仕事のことだけではなく、すぐ隣にいる親友との関係性すらぼやけて先が見えないのだ。イーニドに共感する人たちの視界は、かつても今も、彼女と同じなのだろう。

でもシーモアと、世間からはぐれてしまった僕ら大人の男性はどうだろう。彼もまた「解像度が低い」状態の青春時代を過ごしていたはずだ。少しずつ生き方を心得ていき、視界がクリアになればなるほど自分の眼前に広がる世界には異性からの愛が存在しないことがわかっていく人生。彼のキャラクターデザインが秀逸なのは、「何もない人生の代替案を模索してもがく人」を精緻に描いているからに違いない。この物語で一番解像度が高いのは、シーモアだと思う。

余談 僕らを救う関連作

僕らを救う物語に、ゴーストワールドが加わってくれた。その布陣を少しだけ紹介。
個人的には「モテキ」も似たようなタイプの物語なのだけど、ドラマ版はあまりにも卑屈で、一方映画版はシンデレラストーリーすぎる。それでも「藤本さんみたいなタイプって、ちゃんと需要ありますよ」 とか、「黙って働けバカ!」とか、思わず背筋が伸びるような含蓄に富んでいる。「藤本さんみたいなタイプ」=シーモアだからね。でも藤本って99%がダメ人間だし、シーモアのアナザーストーリーと言う方がしっくりくるかもな。
ビッグバン・セオリー」のラージも紹介しておきたい。
親友たちがみな恋愛に励み結婚を迎える中、彼だけは長続きしないのだ。どうして自分だけ。"I'm unlovable!"と親友の肩を借りて泣くラージの姿には、シットコムながらも涙なしには見られなかった。でも、愛すべき友人たちと、大好きなオタクカルチャーと、誇れる仕事がある。最終シーズンで彼は恋愛よりもそれらを優先した。しかも諦めた様子はなく、ロマンチックな出会いを探し続けると彼は言ったのだ。彼自身の恋愛遍歴には中々の問題があるが、ルーシーという女性との交際はまさしくイーニドとシーモアのそれだ。「いつでも愛するものやひとに囲まれているから、今の恋愛が報われなくても未来を諦めない」を決意したラージの生き方に、一個人として大変救われた。そしてその教科書の一ページにシーモアの生き方も加わってくれた。とても心強い気持ちだ。

このシーン、涙無くしては見られない。

みんな、これからも地球人の営みを真似て、なんとか擬態しながら生きていこうね。