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Homecomingsがくれる"よるべ" / 「New Neighbors」を聴きました

Homecomingsのニューアルバム「New Neighbors」が発売。

かわいい。© Homecomings All Right Reserved.

homecomings.jp

いま一番好きな音楽を聞かせてくれる人たち。先行配信されていたシングル曲はもちろん、アルバム発売に合わせて初公開となった楽曲もまた、すばらしいものばかりだった。

■収録曲:
M1 ラプス
M2 US / アス
M3 ヘルツ
M4 光の庭と魚の夢
M5 アルペジオ
M6 i care
M7 Shadow Boxer
M8 Drowse
M9 ribbons
M10 まばたき
M11 euphoria / ユーフォリア
M12 Elephant

当初はアメリカのカントリーサイドを彷彿とされる曲が多かったのだけど、アルバム「WHALE LIVING」あたりから、日本語歌詞が増えてきた。

今回のアルバムではこれまで英語歌詞の醸していたやわらかな雰囲気はそのままに、日本語だからこそストレートに伝わることや、じっくりと読んではじめて伝わることが、しっとりと上乗せされているように感じる。

そして、これまでの平和的なHomecomingsが一変して「Shadow Boxer」でしたたかなメッセージを発信したことに、今回のリリースでは一番心を打たれた。そのメッセージは、確かだ。

【「Shadow Boxer」 あとがき】

「もうここにはないもの」のように扱われ、見えないものにされているあらゆる差別や分断。目をこらせばそこにはっきりと浮かび上がるそれらと向き合い、たたかうことについての歌です。

 電車でおきた事件から1年。この世界は、この街はだれもが安心して家路につける場所に少しでも近づいたでしょうか。未来のために、声をあげること。それはわたしたち/ぼくたちが受け取ったバトンを、花束のように未来に手渡すこと。ささやかな光を手に、ほのあかるいほうへと。

わたくし個人が音楽をちゃんと聴いてみようと思っているのは、音楽はコミュニケーションだと思うから。それは、作り手のメッセージを受信すること、それを拡散すること、そして同じ感性を持つ他者と共鳴すること。作り手は光で、我々聞き手はプリズムだ。たとえ自分に届いた光がほかの誰かに届かなくても、自分というプリズムの中でずっと輝き、乱反射して、その明度は増していく。

そういった繋がりやコミュニケーションという側面を大事にしたいのに、世界には分断が溢れている。わたくし個人に影響がなくても、見ることすらいやだ。そういうのが存在することも、知りたくもない。「Shadow Boxer」はその分断と対峙する歌。隔ての先にいる人にとっても、こちら側にいる人にとっても、行灯となるような優しい曲だ。しかとこのメッセージが届いていますよと言いたい。大声で言いたい。

そして「US / アス」では、福富さんがかく語る:

▽ Homecomings福富優樹からのコメント

「1対1の密接なつながりではなく、誰かとつないだ手のもう片方を別の誰かに差し伸べるようなつながり。手をとること、連帯すること。そんなひとりでもふたりでもないつながりについての曲です。僕たちが、そしてこの曲があなたの味方に、安心にできる場所になれますように。それがたとえどんなに小さな光だとしても、僕たちやこの曲はそんなよき隣人/Neighborsのような存在であり続けたいと願っています。」

ありがとうございます。本当に。Homecomingsから放たれた光はここに届いております。ひっそりと、「もうここにはないもの」みたいに暮らす、この人間に。だから、自分もこうやって拡散したいんです。

・・・

もう少し具体的な話をしてみる。

今回のアルバムで中心となっているのは、個人的には「Shadow Boxer」だ。穏やかな3拍子から芯のある4拍子への移行は、無意識的に曲へ集中させる力を持っている気がする。1曲目の「ラプス」から「Shadow Boxer」まではどれもシングル曲として発表されてもおかしくないくらい聞きごたえがある。7曲目で最高潮に達したアルバムの小休止というわけではないけど、インターミッション的に「Drowse」が8曲目にある構成、素敵だなあと思う。

「Drowse」の歌詞を読んでみてわかる、Homecomingsが僕らのために詩を編んでくれていると。いいなあ。しかもこの曲は、打ち込みの電子音が目立つかなり珍しい曲だ。

ひと休憩したあと、新たなタイアップ曲「ribbons」から最後の4曲を駆け抜ける。そして最後の曲「Elephant」でも、電子音の幕開け。聞きなれたバンドサウンドではない澄んだ音にハッとさせられる。「よるべない君へ」と歌っているこの曲がラストに置かれていて、やはりこのアルバムのメッセージが居場所の提供にあるんだなと感じる。

この曲はダンボからインスピレーションを得たのかな。いつか飛べるといいね、という優しさにあふれる曲だ。

 

あまりロジカルな分析をするのも野暮だなあと思うけど、感性と技術が重なり合って出来上がったこの作品、色々な角度から聞いてみることで何度でも楽しめそうだ。

・・・

Homecomings, 自分が良いなと思ういつもの歌詞とはすこし違うんですよ、結構めずらしいんですよね。遍く色々な人に届くような祈りや輝きの歌なのだけど、個人的には普段は真逆の、「これ自分のために書かれた曲だァ」というピンポイントな要素が大事だったりする。

今回のアルバムは「New Neighbors」と銘打たれている通り、「誰かに届けること」がテーマになっているような気がする。まるで、一曲一曲が優しい隣人たちからめぐってくる回覧板のようだ。寄る辺や居場所のありかと暖かなメッセージが書かれた回覧板。

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euphoria / ユーフォリア」に書かれた歌詞「僕らを世界につなぎとめるものたちへ きれいな名前だと」。いま自分にとってのそれは、この「New Neighbors」という寄る辺をくれたHomecomingsの音楽、そしてそのグループ名が意味する「居場所に帰る」ことだ。