ハイボール・ハイライツ

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音楽と週報 vol.31 2023/10/21〜10/27

1 キリンジ 23 scrobbles
2 ぎがもえか 19
3 Polta 15
4 グループ魂 15
5 BREIMEN 11
6 チャットモンチー 11
7 ねごと 11
8 グソクムズ 9
9 andymori 7
10 tomoo 6

ぎがもえかのフルアルバムに心が潤った週。音楽を聴くことでなんとか平静を保てるような気がした。週の後半も、安定を求めてねごとやチャットモンチーなど、思春期の名曲を求めていたか。

10/21(土)

朝一で「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を鑑賞。3時間超というわりには静謐で起伏もないお話。でも憎悪がその地域を着実に蝕んでいく様をジリジリと眺めていた感じだった。ざっくり前後半に分かれていて、その分け目の転換があまりにも絶妙なタイミングだったのが素晴らしかった。特段スコセッシの作品は見ていないのだけれど、まさに”巨匠”と呼ぶに相応しい力強い一本。上品で貫禄あるなあ。これは劇場で観てよかった。

その後お昼を食べ、喫茶店で昼寝をし、「悪い子、バビー」を観た。これはめっちゃよかった。倫理観のネジが何本か外れていた時代の、さらにぶっ飛んだ設定のできごと。生理的に受け付けない描写がいくつもあったのだけど、果たしてそれが障がい者(特に知的)やそれに近しい人間がリミット全開放の状態で街を闊歩している様子に対して感じているのかどうか、それを否定することは正直できないと思う。とはいえ優しさを向けられるシーンもたくさんあって、シンプルなゲテモノ映画ではないんだなあ、と良心を感じて安心。とにかく主役の俳優がすごすぎるし、母親への強烈なコンプレックスから生じる、病的な爆乳フェチはちょっと面白かった。

その後GAPのセールでいいめのシャツとパンツを買って帰宅。特に映画は見ないで過ごした。

翌日に恋人と早起きして遠出する予定が、就寝直前に相手の体調不良によりキャンセルに。忙殺されていないかどうか心配になったのとほぼ同時に、「この人もまた離れていってしまうかも」という関係性の心配をした。知り合って間もない状態でお付き合いをし、共通の友人やコミュニティも無い交際はとても不安定だ。というか、そういう状態の関係性が長続きしたことがなく、そもそも交際を始めて2ヶ月くらいたったら相手の方から一方的に「やっぱ無理」と言われることがほとんどだった。ということもあって心がぐちゃぐちゃになり、そして相手のことを100%心配できない自分に最悪な気持ちになり、ふて寝。

10/22(日)

特に見たい映画もなく、ぽっかりと予定が空いた日。久しぶりにお昼ごろまで寝てすっきりした。午後は散歩した。すこし歩いたところにある古本屋さんが映画「ゴーストワールド」の再販版DVDを入荷していたのが気になっていたので買いに行った。残っていたので即購入。ちょうと次に読む本も探していたところだったので、その足で下北沢の古本屋へ。三浦しをん「星間商事株式会社社史編纂室」と稲垣足穂を2冊。いい買い物した。

帰宅して早速「ゴーストワールド」を見た。いやあ、最高だ。人生史に残る名作。かなり個人的な理由で、自分の生き様が肯定された。これについては来月の劇場公開くらいまでにこのテーマで感想をまとめておきたい。カルチャーを愛する、すべての恋愛を諦めた男性と、「あなたがモテないう世界はクソだ」と世をあげつらう厭世家少女。うまく行かないんですよね、わかりますよ。シーモアのセリフはまるで自分の言葉のようだった。ピンポイントすぎて鳥肌が立ったし、自分の思考が目の前の画面から漏れ出しているような感覚になって恥ずかしかった。まだ特典も残っているのですすり尽くしたい。

夜、「ゴーストワールド」関連で「ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ」を見た。撮り方、よかった。ストーリーは可もなく不可もなくだなあ。ただ、現代の黒人コミュニティが抱える怒りやパワーを映画で久々に感じたかも。ふつうに名作だと思う。大人になったソーラ・バーチエミリー・ワトソンのような余裕とシニカルさを感じた。

前日の夜から恋人から返信がなく、それ自体に何も悪い気持ちにはなっていなかったものの、これで関係が急に終わってしまうなら、どう考えても自分の落ち度はないし礼節も人となりも欠落している相手だったんだろう、と無理やり自分を説得した。そうなった場合のことを考え、たまたまその日見た「ゴーストワールド」に救ってもらえばいいや、と思った。でもこの考えに取り憑かれることで精神衛生上まったくいいことはないので、とにかく恋人の身を案じることにした。悪い考えがモワモワしてきたら「ゴーストワールド」のことを考える。落ち着いたら相手の体調をただ心配して待つ。その繰り返し。

たしかこの週末に唇をガリっと噛みちぎってしまい、週明けから地獄のようなメンタルで過ごすことになった。

10/23(月)

出社。自分の担当ではないし、取引も少ないし、話もおもんない会社から営業の打ち合わせをした。同席したメイン担当のおじさんが相変わらず頼りなかった。

それ以外は覚えてない。海外案件がかなり落ち着いてきた。

この日も恋人からの連絡はなく、すこしずつ濁っていく気持ちをPOLTAを聞いて洗った。

10/24(火)

出社早々、MTGを忘れて遅刻する上司のヘルプに入った。いきなり「海外クライアントがいまきてるから場を繋いどいて」とLINEが飛んできてびっくりした。すんなり対応しつつ、ちゃんと会話できた自分を褒めたい。What a nice guy he is.と言われたらしい。

仕事は覚えてない、というか上司が怒り散らかしているおじさん社員の立ち回りが下手すぎて気の毒だった。なぜあなたは上手くやれないのか。能力がないというより、なぜ秘密裏にことを進めるのか。バレてるよ。

三浦しをん「星間商事株式会社社史編纂室」を2日で読み終えた。ラノベかよ。たまには良いね。

帰ってPOLTAをたくさん聞いた。「POLTAのダンスだよ人生は」に生き方を肯定される。「2021」を聞いてサバイブしようと思える。本当に素晴らしい音楽だ。

「空回って何も残らなくても燃やした情熱は愛しい、彷徨って何も気づけなくても彷徨った時間が愛しい」というPOLTAの歌詞に触発され、土曜の夜からまる3日既読すらついていなかった恋人にひとつメッセージを送って寝た。人生はダンス、これ覚えておきたい。

10/25(水)

在宅。ぎがもえかの新しいアルバムを聞いた。今年のベストアルバムに入りそうだ。今年になって活動が精力的になってきた。思い返すとグソクムズとのツーマンに行けたの、だいぶラッキーだったな。昭和歌謡を想起させるゆらめきと、オーガニックをつらぬく質素なクラフトマンシップ。今自分に必要な音楽はこういうのだ。歌詞までちゃんと読んで、アルバムを2周した。仕事は覚えてない。

夜、「アルプススタンドのはしの方」を見た。先生が"ウソ"すぎてハマれなかった。「サマーフィルムにのって」のことを思い出した。

この日の早朝、目が覚めたので携帯を見たら、前日の深夜に恋人から返信が来ていた。ただの体調不良ではなかったことがわかった。婦人科系の症状で、お腹に激痛が走るだけではなく、予後の具合によってはもしかすると機能が失われてしまうかもしれないらしい。まず病名に馴染みがなかったので、できる限り調べた。調べれば調べるほど不穏なレポートと大丈夫なレポートがたくさんでてきた。たとえば自分の生殖機能が失われたらどんな気持ちになるんだろうと想像した。子供を産めないことが確定する人生って、たとえその気がいまはなくても、大変ショッキングなのだろう。特に女性は。子供が産めないことそれ自体がショッキングである以上に、自分の生き方の可能性がひとつ丸ごと消されてしまうという不甲斐なさというか。自分に置き換えても、いまは子供が欲しくないと思っていても、それが身体的に不能なったことが理由で可能性が断絶されたら、計り知れないくらい絶望するだろうな、と思った。

恋人は自分の生き方の可能性を色々と探って、その生き方を自分の意志で選べる人だと思う。そのうちの一つが絶たれてしまう可能性がゼロではないというだけで、当事者とそうでない自分との間には想像や知識で補えない溝があるはずだ。整理がつかず本当に余裕がない、と言ってくれた彼女に対しては、どんなに時間がかかっても良いので、と言うほかなかった。そして3日間、払拭を繰り返していたものの、恋人がこのまま音信不通になり、自分との関係を終わらせたいがために体調不良を利用したのかな、と少しでも思ってしまった自分をボコボコ殴った。仮に彼女が心身ともに復活して、その折に岩雲不要説を言ってきたら、それはそのとき考えよう。男として、恋人としての自分が不要になる可能性それ自体は否定できないと思う。ただ、自分の優しさが必要だと言ってくれた彼女に対して、せめてもう要らないと言われるまでは自分から手を引くようなことはしてはならないと誓った日。

今年触れたたくさんの物語を総動員した。「ザ・ホエール」で学んだ対話の重要性と、「女の一生」「氷点」で学んだ愛と救いと許しのありかた。そして自分の人生の音頭は自分で取りなさいよ、とPOLTAが歌っている。人間関係の正解がわからないこと多すぎるが、リアルな経験がなくても、十分じゃないか。ハイスコア・ガールでストファイのキャラがハルオを脳内で応援していた、あの感じだ。

10/26(木)

ある意味晴れやかになった気持ちで出勤。関わり方が変わって、クライアント側として参加したとある制作現場。立場が変わるだけで周りの人間がめっちゃもてなしてくれるの、面白かった。だから異動前の仕事は嫌だったんだなあ。一緒にいた人たちからランチに誘われて承諾するも、億劫になったので今から帰社してすぐMTGなのを忘れてた、とすこし嘘ついて帰った。めちゃくちゃいい人たちだったから本当に申し訳なかった。でも行きたくなかった。。

吉野家のからあげ丼がおいしかった。でも噛みちぎった口内炎が痛すぎて、30分くらいかけて食事した。それにしても吉野家のからあげ、とっても美味しい。口内炎が痛すぎてメディカルリップを買ってちょこちょこ塗りながら仕事をした。その度に唇をプリプリにして自席に戻るのが我ながらちょっと面白かった。

帰宅してライムベリーを聞いた。初期の方が好き。

この日から稲垣足穂ヰタ・マキニカリス」を読み始める。わけわからんゾーンを抜けるまでちょっと厳しかったけど、たまにすてきな表現があってついつい時間をかけて解読してしまう。

10/27(金)

チャットモンチーを聞いて出勤。色々な仕事が片付いてよかった。帰りはねごとを聞いて帰った。鈴木瑛美子のアルバムは微妙だった。ゴスペル聴きたい。帰宅してTOMOOを熱唱した。いま今週分のこの週報を書いている。恋人の件を本当に誰にも相談できず、そもそもこういうのを相談したくなったのもはじめてだし、この場で書き下ろして発散できた。はあ、すっきりした。

 

つとめていつも通りの日々を過ごすだけなので、週末は「ザ・キラー」を見て、「ヴァチカンのエクソシスト」「エクソシスト」もみるかな。大事な人と、自分とのその関係が無事でありますようにという気持ち、なんだか落ちても死にはしない綱渡りをしている気分だ。